社会保険の加入手続き|会社・個人事業の加入義務と対象・流れを解説
「人を初めて雇った」「法人化した」というとき、避けて通れないのが社会保険(健康保険・厚生年金)への加入です。結論から言えば、法人は従業員が1人(社長1人の会社を含む)でも原則として加入が義務で、入らないまま放置すると後から遡って加入と保険料の納付を求められることがあります。
判断に迷いやすいのは「パートやアルバイトはどこまで入れるのか」「いつ・どこに・何を出すのか」という点です。この記事では、加入義務のある事業所、対象になる従業員、手続きの流れと必要書類、保険料の負担、よくある失敗までを、中小企業・個人事業の経営者向けに整理します。
※制度・要件は改正されます。最新・正確な内容は日本年金機構・年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。労務の最終判断は、社労士・年金事務所・厚生労働省の公表情報で必ず確認してください。
社会保険の加入義務がある事業所

社会保険(健康保険・厚生年金)が必ず適用される事業所を強制適用事業所といいます。区分は次のとおりです。
| 事業所の区分 | 社会保険の加入 |
|---|---|
| 法人(株式会社・合同会社など) | 従業員が1人でも(社長1人の法人を含む)強制適用 |
| 個人事業(適用業種・常時5人以上) | 強制適用 |
| 個人事業(農林漁業・サービス業など、または常時4人以下) | 任意(任意適用の申請で加入可) |
法人であれば、事業主1人だけの会社でも原則として加入対象です。個人事業の場合は、製造・販売など法律で定められた適用業種で、常時5人以上の従業員を使用するときに強制適用となります。なお、令和4年(2022年)10月からは、弁護士・税理士など法律・会計に係る士業の個人事業所も、常時5人以上を使用する場合は強制適用に加わりました。
会社を設立すると社会保険の加入が必要になる、という点は法人化を考える段階で押さえておきましょう。事業所ごとの要件は日本年金機構「適用事業所と被保険者」で確認できます。
※制度・数値は2026年6月時点の情報です。改正・地域により変わるため、最新は厚生労働省・日本年金機構等の公表情報でご確認ください。
加入対象になる従業員

適用事業所で働く70歳未満の人は、国籍や性別、年金受給の有無にかかわらず原則として被保険者になります(70歳以上は健康保険のみ対象になる場合があります)。パートや短時間勤務の人をどこまで入れるかは、次の基準で判断します。
| 区分 | 加入の判断基準 |
|---|---|
| 正社員 | 原則すべて対象 |
| パート・アルバイト | 1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ仕事の通常の労働者のおおむね4分の3以上で対象 |
| 短時間労働者(適用拡大) | 4分の3未満でも、被保険者が一定規模以上の事業所で下表の4要件をすべて満たすと対象 |
短時間労働者の適用拡大の対象となる事業所(特定適用事業所)と、対象者の4要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる事業所 | 厚生年金の被保険者が常時51人以上(2024年10月時点)の事業所 |
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 |
| 賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上 |
| 雇用の見込み | 2か月を超えて雇用される見込み |
| 学生 | 学生でないこと(夜間・通信制などを除く) |
この社会保険の適用拡大は段階的に進んでおり、対象となる事業所の規模は2016年の501人以上から、2022年に101人以上、2024年10月に51人以上へと広がってきました。今後さらに対象が広がる見込みのため、自社が対象かは最新の要件で確認しましょう。加入対象の詳しい基準は、日本年金機構「適用事業所と被保険者」で確認できます。
なお、短時間労働者の要件のうち賃金や雇用見込みの取り扱いは今後見直しが予定されています。最新の適用範囲は必ず公的機関の公表情報でご確認ください。
加入手続きの流れ

加入は届出ベースで進みます。基本的な流れは次のとおりです。
- 新規適用届を年金事務所へ提出(事業所として加入。事実発生から5日以内)
- 被保険者資格取得届を提出(従業員ごとに、入社後すみやかに)
- 被扶養者がいれば届出(配偶者などを扶養に入れる場合)
- 以降、入退社のたびに資格取得届・資格喪失届を提出
新規適用届の様式・添付書類・提出期限は、日本年金機構「新規適用の手続き」にまとまっています。法人の場合は登記簿謄本など、事業所の形態に応じた添付書類が必要です(提出日から90日以内に発行されたものなど条件があります)。電子申請(e-Gov)や労務管理クラウド(SmartHR等)を使うと、書類作成と提出を効率化できます。手続きの全体像は雇用契約書の作り方や就業規則の整備とあわせて進めると、入社時の事務がスムーズです。
保険料の負担と料率

健康保険・厚生年金の保険料は、会社と従業員が原則折半です。会社は従業員負担分を給与から控除し、会社負担分とあわせて納付します。主な料率の目安は次のとおりです。
| 保険 | 料率の目安 | 負担 |
|---|---|---|
| 厚生年金 | 18.3%(2017年9月以降固定) | 労使折半 |
| 健康保険(協会けんぽ) | 都道府県別・平均でおおむね10%前後 | 労使折半 |
厚生年金保険料率は2017年9月の引き上げ終了以降、18.3%で固定されています(日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。健康保険料率は加入する健康保険組合や、協会けんぽの場合は都道府県ごとに異なり、毎年度改定されます。最新の率は協会けんぽ「都道府県毎の保険料額表」で確認してください。40歳以上65歳未満の人は、これに介護保険料が加わります。
毎月の控除額は標準報酬月額に料率を掛けて求めます。計算と控除は手作業だとミスが起きやすいため、給与計算ソフトを使うと、保険料の計算・控除・納付管理を自動化できます。仕組みは給与計算の基礎もあわせて確認しておくと安心です。
※制度・数値は2026年6月時点の情報です。改正・地域により変わるため、最新は厚生労働省・日本年金機構・協会けんぽ等の公表情報でご確認ください。
注意点とよくある失敗

- 未加入はリスクが大きい:加入義務があるのに届け出ていないと、年金事務所の調査で遡って加入・保険料の納付を求められ、従業員負担分を会社が立て替える事態にもなりかねません。
- パート・短時間労働者の判定漏れ:「アルバイトだから対象外」と思い込むのは失敗のもと。労働時間が4分の3以上の人や、適用拡大の対象者を入れ忘れるケースが目立ちます。
- 入退社の届出忘れ:資格取得・喪失の届出には期限があります。退職者の喪失届が漏れると、保険料の精算がずれます。
- 適用拡大の規模変更を見落とす:対象事業所の規模は段階的に下がっています。自社の被保険者数が基準に近づいたら早めに確認しましょう。
- 労働保険(労災・雇用保険)も別途必要:社会保険とは別制度です。あわせて手続きが必要で、助成金の活用検討時にも前提になります。
判断に迷う事例(役員報酬がゼロの社長、ダブルワーク、育休・産休中の保険料免除など)は、自己判断せず年金事務所や社労士に確認するのが安全です。
まとめ

社会保険は、法人なら従業員1人でも原則加入義務、個人事業も適用業種・常時5人以上で強制適用です。パート・短時間労働者の適用拡大も進んでおり、対象範囲の確認が欠かせません。手続きは届出ベースで、新規適用届は事実発生から5日以内が目安。保険料は厚生年金18.3%・健康保険は都道府県別でおおむね10%前後を労使折半します。
最終的な加入判定や料率は、社労士・年金事務所・厚生労働省の公表情報で必ず確認してください。「社会保険の手続きや労務体制づくりを相談したい」場合は、社労士とも連携しながら一緒に整えられます。お気軽にご相談ください。
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よくある質問
社会保険に加入する義務があるのはどんな事業所?
法人は、従業員が1人(社長1人の法人を含む)でも社会保険(健康保険・厚生年金)の加入が原則義務です。個人事業は、適用業種で常時5人以上を使用する場合などに強制適用となります。詳しい要件は日本年金機構や年金事務所でご確認ください。
パート・アルバイトも社会保険に入る?
1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ仕事の通常の労働者のおおむね4分の3以上の場合は対象です。さらに、被保険者が一定規模以上の事業所では、週20時間以上などの要件を満たす短時間労働者も対象となる『適用拡大』が進んでいます。最新の要件は必ず確認してください。
社会保険料は誰が負担する?
健康保険・厚生年金の保険料は、会社と従業員が原則折半で負担します。会社は従業員負担分を給与から控除し、会社負担分とあわせて納付します。給与計算ソフトを使うと、保険料の計算・控除を自動化できます。
厚生年金と健康保険の保険料率は何%?
厚生年金保険料率は2017年9月以降18.3%で固定され、労使折半です。健康保険(協会けんぽ)の料率は都道府県ごとに異なり、平均でおおむね10%前後です。料率は改定されるため、最新は日本年金機構・協会けんぽでご確認ください。
社会保険の手続きはいつまでに行う?
事業所を新たに加入させる新規適用届は、事実が発生してから5日以内に年金事務所へ提出します。従業員ごとの資格取得届も、入社後すみやかに届け出ます。電子申請(e-Gov)や労務クラウドを使うと提出を効率化できます。