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個人事業主の開業ガイド|開業届の書き方・出し方と、最初に整える会計の仕組み

個人事業主の開業ガイド|開業届の書き方・出し方と、最初に整える会計の仕組み

個人事業主としての開業は、納税地の税務署に「開業届」を1枚出すことから始まります。会社設立のような登記や費用は不要で、思っているよりずっとシンプルです。ただし、節税につながる青色申告承認申請書には期限があり、退職して独立する場合は国民健康保険・国民年金の切替も必要になります。最初にやるべき手続きを順番に押さえておきましょう。

具体的には、開業届と青色申告承認申請書の書き方・出し方と提出期限退職後の保険・年金の手続き、そして開業と同時に整えておきたいお金まわりの仕組みを、手順に沿って解説します。

※税制・手続きは改定されます。控除額や期限など最新・正確な内容は国税庁・税務署・専門家でご確認ください。

開業で最初にやる手続き(全体像)

個人事業主の開業で最初に行う開業届・青色申告・保険年金・口座会計準備の流れ

独立・開業のときにやる手続きを、順番に並べると次のようになります。

  1. 開業届を税務署に提出(個人事業の開業・廃業等届出書)
  2. 青色申告承認申請書を提出(青色申告で節税したい場合。開業届と同時が安全)
  3. 国民健康保険・国民年金の切替(会社を辞めて独立した場合。市区町村の窓口へ)
  4. 事業用の口座・会計ソフトなどお金まわりの準備

1〜2は税務署、3は市区町村の窓口、と提出先が分かれる点に注意します。以下で1つずつ見ていきます。

個人事業主として開業するメリット

個人事業主として開業するメリットを税務・屋号・信用・法人化の選択肢で整理した図

そもそもなぜ開業届を出すのか、主なメリットは次のとおりです。

  • すぐ・無料で始められる:開業届を出すだけ。会社設立のような登記費用は不要
  • 青色申告で節税できる:最高65万円の特別控除など(後述)
  • 屋号で活動できる:屋号付きの事業用口座も作れる
  • 社会的な信用・各種申請に使える:補助金・助成金、保育園の就労証明など

まずは個人事業で始め、利益が育ったら法人化(会社設立)を検討する、という流れも一般的です。

開業届と青色申告承認申請書(セットで出す)

開業届と青色申告承認申請書の役割・提出期限・提出先の比較

開業時に税務署へ出す書類は、実質この2つをセットで考えます。提出先はどちらも納税地の所轄税務署です。

書類役割提出期限提出先
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)事業を始めたことの届出事業開始の日から1か月以内(遅れても罰則なし)納税地の所轄税務署
青色申告承認申請書青色申告で節税するための申請原則その年の3月15日まで/その年の1月16日以後に開業した場合は事業開始の日から2か月以内納税地の所轄税務署

※制度・金額・税率・期限は2026年6月時点の情報です。改正により変わるため、最新は国税庁等の公表情報でご確認ください(出典:国税庁個人事業の開業届出・廃業届出等手続所得税の青色申告承認申請手続)。

青色申告承認申請書を出し忘れると、その年は白色申告になり節税メリットを逃します。開業届と同時に出すのが鉄則です。なお、青色申告と白色申告の違いは青色申告と白色申告の違いで詳しく解説しています。

開業届の書き方・出し方

開業届の納税地・屋号・事業概要の記入と持参・郵送・e-Taxでの提出方法

書き方のポイント

  • 納税地:原則は自宅(住所地)。事業所の住所を選ぶこともできます
  • 屋号:任意。屋号付き口座を作りたいなら記入
  • 職業・事業の概要:具体的に(例:Webデザイン業 など)
  • 青色申告:同時に提出する青色申告承認申請書も忘れずに

なお、自宅で開業して住所を公開したくない場合は、バーチャルオフィスの住所を利用する方法もあります。

出し方(3つの方法)

  1. 税務署に持参:その場で控えに収受の確認をもらえる
  2. 郵送:控えと返信用封筒を同封
  3. e-Tax(電子申請):オンラインで完結。後述の青色申告(最高65万円控除)でもe-Taxが鍵になります

様式と記載要領は、国税庁の個人事業の開業届出・廃業届出等手続のページ所得税の青色申告承認申請手続のページからダウンロードできます。提出時は、控え用のコピーも一緒に出して収受印または受信通知を受け取り、保管しておきましょう。融資や補助金の申請で控えの提示を求められることがあります。

最近は freee開業・マネーフォワード クラウド開業などの無料ツールを使うと、質問に答えるだけで開業届と青色申告承認申請書を自動作成でき、そのまま電子申請・印刷ができます。書き方に迷わずに済むため、初めての方に向いています(料金体系は変わるため、利用前に各サービスの公式サイトで最新をご確認ください)。

家族に給与を払う・人を雇うとき

配偶者や家族に手伝ってもらい給与を払う場合、青色申告なら「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで、その給与を経費にできます。また、従業員を雇って給与を支払うときは「給与支払事務所等の開設届出書」などの提出が必要になります。これらにも提出期限があるため、人を雇う予定がある方は開業時に合わせて確認しておきましょう。提出すべき書類は事業の形態で変わるため、迷ったら税務署や税理士に相談すると確実です。

青色申告特別控除はいくら?(65万円・55万円・10万円)

青色申告特別控除の65万円・55万円・10万円の要件比較

開業時に多くの方が気にするのが「青色申告でいくら節税できるか」です。青色申告特別控除は、記帳の方法と申告のやり方で金額が変わります。

控除額主な要件
最高65万円複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内に申告。さらにe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行う
最高55万円複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内に申告(電子申告・電子帳簿保存なし)
最高10万円上記の要件を満たさない青色申告者(簡易な記帳など)

※制度・金額は2026年6月時点の情報です。改正により変わるため、最新は国税庁等の公表情報でご確認ください(出典:国税庁タックスアンサーNo.2070 青色申告制度No.2072 青色申告特別控除)。青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得のある方です。

ポイントは、55万円と65万円の差はe-Tax(電子申告)または電子帳簿保存の有無だけということです。会計ソフトでe-Tax申告まで行えば、追加の手間なく上限の最高65万円を狙えます。

なお、青色申告特別控除は「所得から差し引ける金額」であって、そのまま税金が安くなる金額ではありません。実際の節税額は、控除額にご自身の所得税率や住民税率を掛けた分が目安になります。所得が増えるほど効果も大きくなるため、開業当初から青色申告を選んでおく価値があります。具体的な税額の計算は個別事情で変わるため、確定申告のやり方も参考に、最終的な金額は税務署・税理士でご確認ください。

退職して開業する人の保険・年金の手続き

退職後に開業する人が確認する国民健康保険・国民年金・失業給付・扶養の手続き

会社を辞めて独立する場合は、税務署の手続きとは別に、国民健康保険(または任意継続)と国民年金への切替が必要です。これは市区町村の窓口で行います。

  • 国民健康保険:退職して会社の健康保険を抜けると、原則は国民健康保険に加入します。お住まいの市区町村の窓口で手続きします(在職時の健康保険を一定期間続ける「任意継続」を選べる場合もあります)。
  • 国民年金(第1号被保険者):会社員が抜ける厚生年金から、自営業者などが入る国民年金へ切り替えます。届出先は住所地の市区役所または町村役場、提出期限は退職日の翌日から14日以内が目安です(出典:日本年金機構)。

どちらも「退職してから14日以内に市区町村の窓口へ」と覚えておくと安全です。保険料・要件はお住まいの自治体や年金事務所で必ず確認してください。

また、開業届を出すタイミングには次の点も注意が必要です。

  • 失業給付(基本手当)との関係:退職後に失業給付を受けながら準備する予定なら、開業のタイミングが受給に影響することがあります。ハローワークで取り扱いを確認してから手続きを進めましょう。
  • 家族の扶養に入っている場合:配偶者などの社会保険の扶養に入っている方は、開業して収入が一定を超えると扶養を外れる場合があります。加入先の健康保険組合・協会けんぽの基準を確認しておきます。

※保険・年金・給付の手続きや保険料は自治体・加入先・個別事情で異なります。最新・正確な内容はお住まいの市区町村、年金事務所、日本年金機構、ハローワーク、加入先の健康保険等でご確認ください。

開業と同時に整えたい「お金まわり」4つ

開業時に整える事業用口座・会計ソフト・請求書・経費管理の仕組み

税務署と市区町村の手続きが済んだら、確定申告で慌てないために次を整えます。

① 事業用の銀行口座を分ける

プライベートと事業のお金を分けると、記帳・確定申告が一気に楽になります。屋号付き口座も検討しましょう(→事業用・法人口座の選び方)。

② 会計ソフトを導入する

青色申告(最大65万円控除)には複式簿記が必要ですが、会計ソフトを使えば簿記に詳しくなくても対応できます。銀行・カードと連携すれば、明細を自動で取り込めます(→会計ソフトの比較)。

③ 請求書・見積書の仕組みを用意する

取引が始まると請求書が必要です。請求書ソフトを使えば、作成・送付・管理を効率化でき、インボイスにも対応しやすくなります。

④ 経費の管理方法を決める

レシート・領収書の保存ルールを最初に決めます。電子帳簿保存法にも関わるため、デジタルで残す仕組みにしておくと安心です。事業用の法人カード(個人事業主向けも可)で支払いを一本化すると、経費管理がさらに楽になります。どこまで経費にできるかは個人事業主の経費はどこまで?で確認しておきましょう。

開業資金や当面の運転資金が必要な場合は、資金調達の方法まとめで創業期に使える融資・補助金の選択肢を確認しておきましょう。これらを整えておけば、初めての確定申告のやり方も手順どおりに進めやすくなります。

インボイス(適格請求書)はどうする?

個人事業主がインボイス登録を取引先・売上規模・消費税負担から判断する図

取引先が課税事業者で、消費税の仕入税額控除を求める場合、インボイス発行事業者の登録を検討することになります。登録すると消費税の納税義務が生じるため、自分の取引先・売上規模を踏まえた判断が必要です。迷う場合は専門家に相談しましょう(→インボイス制度の対応ガイド)。

よくある失敗と注意点

個人事業主の開業で青色申請忘れ・電子申告未準備・保険年金忘れなどを防ぐ注意点

開業時につまずきやすいポイントを、先回りで押さえておきましょう。

  • 青色申告承認申請書を出し忘れる:開業届とセットで提出する。期限を過ぎるとその年は白色申告になり、最高65万円控除を逃します
  • e-Tax・電子帳簿保存を準備せず55万円どまり:65万円控除には電子申告か電子帳簿保存が必要。会計ソフトでe-Tax申告まで行う前提で準備する
  • 退職後の国民健康保険・国民年金の切替を忘れる:税務署の手続きとは別に、市区町村の窓口で14日以内が目安
  • プライベートと事業のお金を混ぜる:口座・カードを分けて記帳を楽にする
  • 領収書を放置して確定申告で慌てる:会計ソフトで都度記帳しておく
  • 開業の実態がないのに開業届だけ出す:事業の実態を伴って提出する

まとめ

個人事業主の開業から税務署手続き・保険年金・お金まわり・インボイス判断までの全体像

個人事業主の開業は、①開業届+青色申告承認申請書を税務署に出す → ②退職した人は国民健康保険・国民年金を市区町村で切り替える → ③口座・会計ソフトなどお金まわりを整える、という順番で進めれば迷いません。青色申告で最高65万円の控除を狙うなら、複式簿記とe-Tax(または電子帳簿保存)が前提になる点を、開業のタイミングから意識しておきましょう。

なお、税務の最終的な判断は個別事情で変わります。控除額・期限・要件などは国税庁・税務署・税理士などの専門家に必ずご確認ください。「開業後の会計や節税、いずれの法人化まで含めてどう設計すればいいか」から相談したい場合は、起業・バックオフィスの立ち上げを伴走できます。お気軽にご相談ください

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よくある質問

開業届はいつまでに出せばいいですか?

個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)は、原則として事業開始の日から1か月以内に、納税地の所轄税務署へ提出します。提出が遅れても罰則はありませんが、青色申告で節税したい場合の『青色申告承認申請書』には期限があるため、開業届とセットで早めに出すのがおすすめです。最新の様式・期限は国税庁で確認してください。

青色申告承認申請書の提出期限はいつですか?

原則は青色申告をしようとする年の3月15日までです。その年の1月16日以後に新たに開業した場合は、事業開始の日から2か月以内が期限です。期限を過ぎるとその年は青色申告ができず白色申告になるため、開業届と同時に提出するのが安全です。

開業届を出すメリットは何ですか?

屋号付きの事業用口座を開設しやすくなる、青色申告(最高65万円の特別控除など)の前提になる、補助金・助成金や保育園の就労証明などに使える、といったメリットがあります。事業として続けるなら出しておくのが基本です。

会社を辞めて開業したら、保険や年金の手続きは必要ですか?

必要です。退職後に独立する場合、原則として国民健康保険と国民年金(第1号被保険者)への切替手続きを、お住まいの市区町村の窓口で行います。国民年金は退職日の翌日から14日以内が届出の目安です。詳しい要件はお住まいの市区町村・年金事務所でご確認ください。

青色申告と白色申告、どちらがいいですか?

節税メリットの大きい青色申告がおすすめです。最高65万円の特別控除、赤字の繰越し、家族への給与(青色事業専従者給与)などのメリットがあります。以前は記帳が大変でしたが、今は会計ソフトを使えば簿記に詳しくなくても青色申告に対応できます。