電子帳簿保存法の対応ガイド|中小企業がやるべき電子取引データ保存をわかりやすく
「電子帳簿保存法って、結局うちは何をすればいいの?」——名前は聞くものの、対応が曖昧なままの事業者は少なくありません。ポイントを絞ると、中小企業がまず対応すべきことはシンプルで、電子でやり取りした請求書・領収書を「電子のまま、後から探せる形で」保存することに尽きます。
法人・個人事業者を問わず対応が必要な**「電子取引データ保存」**を中心に、3つの区分・2つの要件・現実的な進め方を整理します。
⚠️ 本記事は概要をわかりやすく解説するものです。最新の要件・個別の判断は、国税庁の情報や税理士など専門家に必ずご確認ください。 税務・法務の最終判断は税理士等の専門家に確認してください。
電子帳簿保存法とは|3つの区分

電子帳簿保存法は、帳簿・書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。大きく3つの区分があり、対応が任意か必須かが分かれます。
| 区分 | 内容 | 対応 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で最初から電子的に作成した帳簿・書類を電子保存 | 希望者のみ(任意) |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った書類をスキャン・撮影して電子保存 | 希望者のみ(任意) |
| 電子取引データ保存 | 電子で授受した取引情報を電子のまま保存 | 法人・個人事業者は対応が必要 |
国税庁の資料でも、①電子帳簿等保存と②スキャナ保存は「希望者のみ」、③電子取引データ保存は「法人・個人事業者は対応が必要」と整理されています。つまり、**すべての事業者に関係するのが「電子取引データ保存」**です。まずはここを押さえましょう。区分ごとの詳しい要件やQ&Aは、国税庁の電子帳簿保存法関係ページで確認できます。
※制度・金額・要件は2026年6月時点の情報です。改正により変わるため、最新は国税庁等の公表情報でご確認ください。
義務なのは「電子取引データ保存」

電子的にやり取りした取引データは、電子のまま保存する——これが基本ルールです。紙に印刷して保存するだけでは要件を満たさないとされています。
申告所得税・法人税に関して帳簿・書類の保存義務がある事業者は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやり取りした場合、その電子取引データを保存しなければならないとされています。
「電子取引」とは?(身近な例)
- メールに添付されて届いたPDFの請求書・領収書
- ネット通販・ECサイトでダウンロードした領収書
- クラウドサービス上で受け取った請求書・契約書
- 電子契約サービスで締結した契約書
紙でやり取りしていなくても、これらは「電子取引」に当たります。
保存の2つの要件

電子取引データの保存には、大きく2つの要件があります。
1. 真実性の確保(改ざん防止)
次のいずれかで、データが改ざんされていないことを担保します。
- タイムスタンプが付与されたデータを授受する/授受後すぐにタイムスタンプを付与する
- 訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムで授受・保存する
- 改ざん防止のための事務処理規程を定めて運用する(システムがなくてもこの方法で対応可能)
中小企業が低コストで始めるなら、最後の「事務処理規程」が現実的です。国税庁はサンプルとなる規程のひな形も公表しています。
2. 可視性の確保(あとで探せる)
- システムの概要を記した書類等を備え付けること
- ディスプレイ・プリンタ等で画面に表示・出力できること
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できること(範囲指定や複数項目の組み合わせ検索にも対応できる状態が原則)
検索要件は、専用システムを使う方法のほか、ファイル名に「取引年月日・取引金額・取引先」を入れて規則的に保存し、索引簿(一覧表)を作る、といった方法でも対応できます。
※制度・金額・要件は2026年6月時点の情報です。改正により変わるため、最新は国税庁等の公表情報でご確認ください。
検索要件が不要になる特例・猶予措置

小規模な事業者の負担を軽くするため、いくつかの緩和が設けられています。
| 区分 | 条件(いずれかを満たす) | 効果 |
|---|---|---|
| 検索要件の特例 | 基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下で、税務調査時にデータのダウンロードの求めに応じられる | 検索機能の確保が不要 |
| 検索要件の特例 | 出力書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている | 検索機能の確保が不要 |
| 猶予措置 | ①要件どおり保存できないことに相当の理由があると所轄税務署長が認める(事前申請は不要)/②ダウンロードの求め・出力書面の提示の求めに応じられる | 改ざん防止・検索などの保存時の要件への対応が不要 |
検索要件が不要となる対象は、令和5年度の税制改正で、基準期間の売上高「1,000万円以下」から「5,000万円以下」へ拡大されました(令和6年1月1日以後にやり取りする電子取引データが対象)。
なお、令和4年度改正で設けられた宥恕措置は令和5年12月31日で廃止され、令和6年1月1日以後は上記の猶予措置の枠組みに切り替わっています。猶予措置を使う場合は、宥恕措置と異なりデータのダウンロードの求めにも応じる必要がある点に注意してください。
※制度・金額・要件は2026年6月時点の情報です。改正により変わるため、最新は国税庁等の公表情報でご確認ください。
中小事業者の現実的な対応方法

大きく2つのアプローチがあります。
- A. システムで対応する:会計ソフト・請求書ソフト・電子契約・文書管理クラウドなど、電帳法対応をうたうサービスを使う(最も楽)
- B. 規程+ファイル名ルールで対応する:改ざん防止の事務処理規程を整え、ファイル名を「取引年月日_取引先_取引金額」などで統一し、フォルダで管理する(コストを抑えたい場合)
件数が多い・今後増えるなら A(システム)、件数が少なく当面コストを抑えたいなら B(規程+ルール) が現実的です。Bを選ぶ場合も、基準期間の売上高が5,000万円を超えると検索要件の特例が使えなくなるため、件数の増加に合わせて早めにシステム化を検討すると安全です。
対応チェックリスト

- メールやECで受け取る請求書・領収書を洗い出した
- それらを「電子のまま」保存する場所を決めた
- 検索(取引年月日・取引金額・取引先)できる方法を用意した
- 改ざん防止(タイムスタンプ/システム/規程)の方法を決めた
- 事務処理規程が必要なら整備した(国税庁のひな形を活用)
- 自社が検索要件の特例・猶予措置の対象になるか確認した
- 担当者と運用ルール(どこに・どう保存するか)を共有した
まとめ

電子帳簿保存法でまず対応すべきは「電子取引データの保存」。ポイントは、**真実性(改ざん防止)と可視性(検索できる)**の2要件を満たすことです。件数が多ければシステムで楽に、少なければ事務処理規程+ファイル名ルールでコストを抑えて対応できます。基準期間の売上高が5,000万円以下なら検索要件の特例、保存が難しい事情があれば猶予措置という受け皿もあります。
ただし要件や対象は改正で変わり得るため、自社の判断に迷う部分は、税理士など専門家に必ず確認しましょう。税務・法務の最終判断は専門家に委ねるのが安全です。
経理まわりの電子化・システム選びを相談したい場合は、業務の棚卸しから一緒に設計できます。お気軽にご相談ください。
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よくある質問
メールで受け取った請求書を紙に印刷して保存すればいい?
電子取引で受け取ったデータ(メール添付のPDF請求書など)は、原則として電子データのまま保存する必要があり、紙への出力保存だけでは要件を満たさないとされています。電子データを、真実性・可視性の要件に沿って保存できる体制を整えましょう。
具体的に何を準備すればいい?
大きく2つです。(1)後から探せる『可視性』(取引年月日・取引金額・取引先で検索できる保存方法、またはファイル名のルール化)、(2)改ざんを防ぐ『真実性』(タイムスタンプや訂正・削除履歴の残るシステム、または事務処理規程の整備)。システムを使うか、規程+ファイル名ルールで運用するかを決めます。
小規模な事業者向けの緩和はある?
基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下で、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられる場合などは、検索機能の確保が不要とされています。また、保存できなかったことに相当の理由があると認められる場合の猶予措置もあります。ただし要件は変わり得るため、最新は国税庁の情報や税理士に確認してください。
宥恕措置はまだ使える?
令和4年度改正で設けられた宥恕措置は令和5年12月31日で廃止されました。令和6年1月1日以後にやり取りする電子取引データには、原則どおりの保存か、新たな猶予措置(相当の理由+ダウンロードの求め・出力書面の提示に応じる)の枠組みが適用されます。
対応しないとどうなる?
保存要件を満たさない場合、青色申告の承認取消しや、税務調査で経費・取引の事実確認が難しくなるおそれがあります。まずは電子取引データを電子のまま、検索できる形で保存する体制づくりから始めましょう。判断に迷う部分は税理士にご相談ください。