マーケティングファネルとKPIの考え方|成果を数字で管理する
施策はやっているのに、何が効いて何が効いていないか分からない。その状態から抜け出す近道は3つあります。1つ目は、最終成果(売上や問い合わせ)だけでなくその手前の数字を1〜2個持つこと。2つ目は、KPIを増やさず**「流入→問い合わせ→成約」の3つに絞って毎週見ること。3つ目は、各KPIに担当と打ち手をひもづけ**、数字を「眺める対象」から「動かす対象」に変えることです。
この3つを押さえるだけで、改善の優先順位が決まり、打ち手の精度とスピードが上がります。以下では、マーケティングファネルとKPI設計の作り方を、中小企業の実務目線で順番に解説します。
マーケティングファネルとは

マーケティングファネルとは、見込み客が 認知 → 興味 → 検討 → 行動 → 継続 へと進む過程を、漏斗(ファネル)の形で表したモデルです。上の段階ほど人数が多く、下に進むほど絞られていくため、逆三角形で描かれます。
ファネルを使う目的は、成果を1つの数字で見るのをやめ、段階ごとに分けて弱点を探せるようにすることです。「問い合わせが少ない」とひとことで言っても、そもそも認知されていないのか、サイトには来ているが行動に至らないのかで、打つべき手はまったく変わります。段階で区切ると、その違いが数字で見えるようになります。
| 段階 | 見込み客の状態 | この段階の役割 |
|---|---|---|
| 認知 | 存在を知ってもらう | 母数を作る入口 |
| 興味 | 関心を持ち、もっと知りたくなる | 来訪者をつなぎとめる |
| 検討 | 比較し、自社が選択肢に入る | 不安を解消し前に進める |
| 行動 | 問い合わせ・購入・予約する | 成果が発生する |
| 継続 | リピート・ファンになる | 利益を伸ばす |
各段階で見込み客が「次に何を考えているか」を整理したい場合は、カスタマージャーニーマップとあわせて使うと、ファネルの各段階と顧客の接点が結びつきやすくなります。
KPIの作り方:指標の選び方

ファネルを引いたら、次は各段階に**KPI(重要業績評価指標)**を置きます。やみくもに数字を並べるのではなく、選び方には順番があります。
まずKGIを決め、そこから逆算する
KGIは最終的なゴール(例:月の成約20件、または売上)です。これを起点に、必要な数字を上の段階へさかのぼって置いていきます。
- 成約20件が必要 → 過去の成約率から逆算して問い合わせが何件必要か
- その問い合わせを生むには、サイト来訪が何件必要か
- その来訪を生むには、どれだけの認知(表示・リーチ)が必要か
このようにゴールから逆算すると、各段階のKPIが「なんとなくの数字」ではなく「ゴールに必要な数字」になります。逆算の係数(成約率や転換率)は、後述のとおり自社の実績から作ります。
「動かせる数字」を選ぶ
KPIは、見て終わりではなく改善行動につながる数字を選びます。たとえば認知段階で「ブランド認知度」を置いても、中小企業が日々動かすのは難しいものです。代わりに「指名検索数」「SNSのリーチ」「広告の表示回数」など、施策で動かせる数字を選びます。
各段階のKPI候補を挙げます。なお、ここに挙げる指標はあくまで候補であり、自社の商材に合うものを選んでください。
| 段階 | KPI候補 | 計測の主な道具 |
|---|---|---|
| 認知 | 表示回数・流入数・指名検索数・SNSリーチ | アクセス解析(GA4)・SEO |
| 興味 | 滞在時間・回遊ページ数・メール/LINE登録数 | アクセス解析・MA |
| 検討 | 資料請求数・LP到達数・問い合わせフォーム到達数 | アクセス解析・CRM/SFA |
| 行動 | 問い合わせ数・成約数・CVR | CRM・アクセス解析 |
| 継続 | リピート率・解約率・LTV | CRM・購買データ |
先行指標と結果指標を組み合わせる
KPIには2つの性格があります。
- 結果指標:売上・成約数・CVRなど、すでに起きてしまった結果を表す数字
- 先行指標:フォーム到達数・資料請求数・メール開封数など、結果より前に動く数字
結果指標だけを見ていると、悪化に気づいた時には手遅れになりがちです。一方で先行指標は自分たちで早めに動かせます。たとえば「フォーム到達は増えているのに成約が伸びない」と分かれば、フォームや提案の中身に問題があると早い段階で見当がつきます。結果指標で着地を確認し、先行指標で日々の手を打つ、この組み合わせが実務では効きます。
ボトルネックの見つけ方:段階間の転換率

KPIを段階ごとに並べる本当の狙いは、どこで人が落ちているか(ボトルネック)を見つけることにあります。ここで使うのが、段階と段階の間の転換率です。
転換率は「次の段階に進んだ人数 ÷ 前の段階の人数」で出します。
- 各段階の人数を縦に並べる(例:流入5,000 → サイト内回遊1,500 → フォーム到達200 → 問い合わせ40 → 成約8)
- 段階の間の転換率を計算する(回遊率30%、フォーム到達13%、問い合わせ化20%、成約率20%)
- 転換率が極端に低い段階を、改善の最優先に選ぶ
上の例なら、流入から回遊への30%は悪くないが、回遊からフォーム到達への13%が他より弱い、といった見方ができます。ここが弱いなら、検討段階の不安解消や導線が課題だと当たりがつきます。
ポイントは、人数の絶対値ではなく転換率で比べることです。下の段階ほど人数は当然少なくなるため、人数だけ見ると「成約が少ない」と最下段ばかり気になります。しかし本当の弱点はもっと上にあることが多く、転換率で見ると見落としを防げます。
弱点が「行動(CVR)」にあるならCVR改善やABテスト、「興味〜検討」にあるならコンテンツやリードナーチャリング、というように、ボトルネックの段階に合わせて打ち手を選びます。全段階を一度に直すのではなく、一番効く1段階に集中するのが効率的です。
中小企業がまず置くべき最小限のKPI

ここまで段階別に多くの候補を挙げましたが、最初から全部を追う必要はありません。中小企業がまず置くべきは、たった3つです。
- 流入数(サイトに来た人の数)
- 問い合わせ数(またはリード数)
- 成約数
この3つと、間の2つの転換率(流入→問い合わせ、問い合わせ→成約)を見るだけで、「人が来ていないのか」「来ているが問い合わせに至らないのか」「問い合わせはあるが決まらないのか」が切り分けられます。改善の入口としては、これで十分に機能します。
慣れてきたら、弱い段階に1〜2個だけ補助のKPIを足します。たとえば問い合わせが弱いなら「フォーム到達数」を、継続を伸ばしたいなら「リピート率」を加える、という順番です。少なく始めて、必要になってから足す。これが続けられるKPI設計の鉄則です。
計測の前提:アクセス解析とCRMをそろえる

KPIは、数えられて初めて意味を持ちます。運用を始める前に、最低限の計測の土台を用意します。
- 流入と行動:GA4とSearch Consoleで、来訪数・流入元・フォーム到達やボタンクリックを計測する
- 見込み客と成約:CRM/SFAで、問い合わせから成約までの件数と状態を記録する
- 両者をつなぐ:問い合わせフォームの送信を成果(コンバージョン)として設定し、Web側の数字とCRM側の数字を突き合わせられるようにする
注意したいのは、手元のExcelに毎回手で転記する運用は続かないことです。最初は完璧でなくてよいので、フォーム送信が自動でカウントされる状態と、問い合わせがCRMに残る状態だけは作っておきます。数字を集めること自体に手間がかかると、運用は止まります。蓄積した数字をグラフで共有したい段階になったら、BIツールの活用も選択肢になります。
KPIツリーの作り方と運用

KPIツリーで構造を見える化する
KPIツリーとは、KGI(頂点)を分解して、各段階のKPIを枝のようにつないだ図です。「どの数字がどの数字に効くか」を一目で示せます。
以下は構造を示すための例示の数値です(実際の数値は商材や時期で大きく変わるため、自社の実績に置き換えてください)。
[KGI] 月の成約 8件 / 売上 ◯◯円
└ 成約数 = 問い合わせ数 × 問い合わせ→成約の転換率
├ 問い合わせ数 40件
│ └ = フォーム到達数 × フォーム送信率
│ ├ フォーム到達数 200件
│ │ └ = 流入数 × 回遊→フォーム到達率
│ │ ├ 流入数 5,000(SEO・広告・SNS・指名検索)
│ │ └ 回遊→フォーム到達率 13%(先行指標)
│ └ フォーム送信率 20%(先行指標)
└ 問い合わせ→成約の転換率 20%(結果指標に近い先行指標)
このように分解すると、「成約を増やす」という大きな目標が、流入を増やす・回遊からフォームへの率を上げる・フォーム送信率を上げる・商談化率を上げるという具体的な打ち手の選択肢に分かれます。どの枝を動かすと頂点がどれだけ動くかが見えるので、施策の優先順位を議論しやすくなります。
レビューの頻度と進め方
作って終わりにせず、定期的に見直す運用に乗せます。中小企業なら、次のリズムが現実的です。
- 週1回(5〜10分):流入・問い合わせ・成約の3つと転換率をざっと確認し、急な落ち込みがないか見る
- 月1回(30〜60分):転換率の推移から弱い段階を1つ選び、翌月の打ち手を1〜2個決める
- 四半期に1回:KPIそのものが今の事業に合っているか、指標を入れ替える必要がないかを見直す
レビューで最も大切なのは、「だから何をするか」まで決めることです。数字を確認するだけの会議は形だけで終わります。各KPIに担当者を割り当て、弱い段階に対する打ち手と期限をセットで決めると、ツリーが施策につながります。マーケティング全体の進め方を整理したい場合は、デジタルマーケティングの全体像やマーケティング戦略の立て方もあわせてご覧ください。
よくある失敗とその直し方

KPIが多すぎて、結局どれも見ない
ありがちなのが、思いつく指標をすべて並べてしまうケースです。ダッシュボードは立派でも、数が多いと毎週見るのが負担になり、やがて誰も開かなくなります。まず3つに絞り、弱い段階にだけ補助指標を足すという最小構成に戻しましょう。
KPIが行動につながっていない
数字を眺めるだけで、誰が・いつ・何をするかが決まっていないパターンです。これでは数字は動きません。各KPIに担当・打ち手・期限をひもづけ、レビューで必ず次の行動まで決めることで直ります。
結果指標しか見ていない
売上や成約数だけを追っていると、悪化に気づいた時には手遅れになりがちです。**先行指標(フォーム到達数・問い合わせ数など)**をあわせて持ち、早めに兆候をつかめるようにします。
外部の平均値を目標にしてしまう
「業界平均CVRは◯%だから」と外部の数字を目標に据えると、商材や客層の違いで判断を誤りやすくなります。目標は自社の実績から作るのが基本です。まず数か月の自社データを基準とし、そこから少しずつ引き上げていきます。
計測が手作業で、運用が止まる
毎回Excelに手で転記する運用は、必ずどこかで止まります。フォーム送信が自動でカウントされ、問い合わせがCRMに残る状態を先に作り、数字を集める手間を減らしておきましょう。
まとめ

マーケティングファネルとKPIは、成果を段階ごとに数字で管理し、弱点を見つけて改善するための枠組みです。要点を整理します。
- ファネル(認知→興味→検討→行動→継続)で成果を段階に分け、KGIから逆算してKPIを置く
- 結果指標で着地を確認し、動かせる先行指標で日々の手を打つ
- 弱点は人数ではなく段階間の転換率で探し、一番効く1段階に集中する
- 中小企業はまず**「流入→問い合わせ→成約」の3つ**から始め、必要になってから足す
- 各KPIに担当と打ち手をひもづけ、週次・月次で「次にやること」まで決める
数字は、集めて眺めるためではなく、次の一手を決めるために使います。自社のKPI設計や計測の土台づくりを相談したい場合は、設計から運用まで一緒に取り組めます。お気軽にご相談ください。
よくある質問

Q. マーケティングファネルとは何ですか? A. 見込み客が「認知→興味→検討→行動→継続」へと進む過程を漏斗の形で表したモデルです。段階に分けることで、どこで人が離れているか、どこを改善すべきかが見えやすくなります。
Q. KPIはいくつ置けばいいですか? A. 中小企業ならまず「流入数→問い合わせ(リード)数→成約数」の3つで十分です。多いほど良いわけではなく、毎週見て手を打てる数に絞ることが大切です。
Q. 先行指標と結果指標はどう違いますか? A. 結果指標は売上や成約数など「起きた結果」、先行指標はフォーム到達数など「結果より前に動かせる数字」です。両方を組み合わせると、悪化の兆候を早くつかめます。
Q. 業界平均の数値を目標にしてよいですか? A. 参考程度にとどめ、目標は自社の実績から作ることをおすすめします。CVRや転換率は商材・客層で大きく変わるため、外部の平均を当てはめると判断を誤りやすいためです。
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よくある質問
マーケティングファネルとは?
見込み客が『認知 → 興味 → 検討 → 行動 → 継続』へと進む過程を、漏斗(ファネル)の形で表したモデルです。上から下へ進むほど人数は絞られます。各段階を分けて見ることで、どこで人が離れているか、どこを改善すべきかが見えやすくなります。
KPIはいくつ置けばいいですか?
中小企業なら、まずは『流入数 → 問い合わせ(またはリード)数 → 成約数』の3つで十分です。KPIは多いほど良いものではなく、毎週見て手を打てる数に絞ることが大切です。慣れてきたら段階間の転換率を1〜2個足す、という順番で増やしましょう。
先行指標と結果指標はどう違いますか?
結果指標は売上や成約数など『起きてしまった結果』、先行指標は問い合わせ数やフォーム到達数など『結果より前に動かせる数字』です。結果指標だけ見ても手遅れになりがちなので、自分たちで動かせる先行指標をあわせて置くと、早めに対策できます。
業界平均のCVRや転換率を目標にしてよいですか?
参考程度にとどめ、目標は自社の実績から作ることをおすすめします。CVRや転換率は商材・価格・客層で大きく変わり、外部の平均値を当てはめると判断を誤りやすいためです。まず数か月の自社データを基準とし、そこから少しずつ引き上げる目標が現実的です。
KPIを置いても改善が進まないのはなぜですか?
多くは『指標が行動に結びついていない』ことが原因です。数字を眺めるだけで、誰が・いつ・何をするかが決まっていないと動きません。各KPIに担当と打ち手をひもづけ、月1回など決まった頻度で見直す運用にすると、数字が施策につながります。