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契約・法務

反社チェックと反社条項の実務|契約解除の進め方と中小企業の体制づくり

反社チェックと反社条項の実務|契約解除の進め方と中小企業の体制づくり

新規の取引先から「反社会的勢力ではないことの表明・確約書に押印してほしい」と求められた。あるいは、発注しようとしている会社の社名を検索したら気になる記事が出てきて、手が止まった――。中小企業の契約実務で意外に多いのが、この「反社(反社会的勢力)まわり」の困りごとです。社内に前例がなく、誰に聞けばいいかも分からない。しかし放置すれば、取引先や金融機関との関係にまで波及しかねません。

先に要点を3つ挙げます。

  1. 契約書の反社条項(暴力団排除条項)は「入れるかどうか」ではなく「どう書くか」の段階に来ている。多くの都道府県の暴力団排除条例に、書面契約時の特約を定める努力義務が置かれています
  2. 反社チェックは相手を完全に見抜く手段ではない。目的は「疑わしい兆候を拾い、確認した事実を記録に残すこと」。完璧を目指すより、標準手順を決めて回し続けるほうが実効性があります
  3. 疑わしいと分かったら、単独で判断しない・単独で交渉しない。弁護士、所轄警察署、都道府県の暴力追放運動推進センター(暴追センター)に相談してから動くのが原則です

※本記事は2026年7月時点で公開されている法令・通達・公表資料をもとにした一般的な整理です。暴力団排除条例は都道府県ごとに規定が異なり、個別の契約条項の有効性や解除の可否は事案によって結論が変わります。重要な判断は弁護士など専門家、および所轄警察署・暴力追放運動推進センターにご確認ください。

なぜ反社排除が必要か|条例・政府指針・取引先からの要請

反社排除が必要な理由と企業を守るリスク管理

反社排除が「大企業だけの話」ではなくなった理由は、大きく3つあります。

1. 全都道府県に暴力団排除条例がある

暴力団排除条例は、2011年(平成23年)10月までに全都道府県で施行されました(令和5年度 企業を対象とした反社会的勢力との関係遮断に関するアンケート)。内容は都道府県ごとに異なるため、ここでは代表例として東京都暴力団排除条例(平成23年3月18日公布、同年10月1日施行)を見ます。事業者に関わる主な規定は次のとおりです。

条文内容性格
第18条第1項契約が暴力団の活動を助長し、または暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合、相手方や代理・媒介する者が暴力団関係者でないことを確認するよう努める努力義務
第18条第2項書面契約では、①相手方が暴力団関係者と判明したら催告なく解除できる、②関連契約の当事者が該当したら必要な措置を求められる、③その求めに正当な理由なく応じなければ契約から排除できる、という特約を定めるよう努める努力義務
第24条規制対象者に対する利益供与の禁止(用心棒料の支払い、暴力団の活動を助長すると知りながらの利益供与など)禁止規定
第27条・第29条違反行為に対する公安委員会の勧告、および一定の場合の公表行政措置

第18条は「努めるものとする」という努力義務であり、条項を入れなかったこと自体に罰則はありません。一方、第24条の利益供与の禁止は禁止規定で、違反の類型によっては勧告・公表の対象となり、さらに命令に従わない場合などには罰則が定められています。「うっかり条項を入れ忘れた」よりも「事情を知りながら関係を続けた」ほうが、はるかに重い問題になる構造だと理解しておくとよいでしょう。条例の内容は都道府県ごとに異なるため、適用や解釈で迷ったら所轄警察署または都道府県の暴追センターに確認してください。

2. 政府指針が「あらゆる企業」を対象にしている

2007年(平成19年)6月19日、犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針が定められました。この指針が示す5つの基本原則は、その後の実務の土台になっています。

基本原則中小企業にとっての意味
組織としての対応担当者個人に判断させない。社内規程に根拠を置き、経営トップ以下で対応する
外部専門機関との連携平素から警察・暴追センター・弁護士と連絡が取れる関係を作っておく
取引を含めた一切の関係遮断取引だけでなく、寄付・購読・後援なども含めて関係を持たない
有事における民事と刑事の法的対応泣き寝入りせず、民事の手段を尽くし、被害届の提出もためらわない
裏取引や資金提供の禁止自社の不祥事をネタにされた場合でも、隠すための裏取引をしない

指針に法的拘束力はなく、完全に実施しなかったからといって直ちに罰則等の不利益が与えられるものではないと解説資料に明記されています。ただし同じ解説で、取締役の善管注意義務の判断にあたって民事訴訟等の場で本指針が参考にされることはあり得るとされ、参考裁判例として平成18年4月10日の最高裁判決が挙げられています。罰則がないから無視してよい、という性質のものではありません。 一方で同解説は、中小企業・零細企業では内容を忠実に実施することが困難を伴うため、企業規模に応じて5つの基本原則を中心とした適切な対応をすることが大切だとも述べています。身の丈で始めてよい、という後押しがある点は覚えておいてください。

3. 取引先・金融機関から求められる

現実に中小企業が反社対応を迫られるきっかけは、条例や指針よりも「相手から求められた」であることが多いはずです。大企業との取引開始時、金融機関の口座開設や融資、公共工事の入札参加資格――そこで書類が出せなければ、取引そのものが進みません(詳細は後述)。

反社会的勢力とは何を指すか|属性要件と行為要件

「反社会的勢力=暴力団」と考えていると、実務では取りこぼします。前掲の政府指針は、暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人を反社会的勢力ととらえるとしたうえで、属性要件と行為要件の両面に着目することが重要だとしています。

着目点具体例
属性要件暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等
行為要件暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求

なぜ両方が必要かというと、属性だけを条件にすると「暴力団と証明できない相手」には手が出せなくなるからです。指針の解説も、暴力団排除条項の活用にあたっては、属性要件のみならず、反社会的勢力であることを隠して契約を締結することや契約締結後に違法・不当な行為を行うことという行為要件の双方を組み合わせることが適切だとしています。

周辺の類型にも注意が必要です。警察庁の通達暴力団排除等のための部外への情報提供について(平成31年3月20日)では、暴力団員のほか、暴力団準構成員、元暴力団員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者などの区分が用いられています。同通達は、元暴力団員について、過去に暴力団に所属していたという事実だけをもって情報提供をしないこととし、共生者などについても漫然と判断せず具体的事案ごとに検討するよう求めています。自社の調査でも、断片的な情報で人を反社会的勢力と決めつけない姿勢が必要です。

近年の情勢変化も押さえておきましょう。警察庁の令和6年における組織犯罪の情勢によれば、暴力団構成員等の数は令和6年末現在で1万8,800人と過去最少になった一方、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺などに深く関与する「匿名・流動型犯罪グループ」が治安対策上の脅威として挙げられています。組織名で見分けられない相手が増えていることは、反社チェックの限界を考えるうえで重要な事実です。

反社条項(暴力団排除条項)の書き方

反社排除条項の表明保証と解除と損害賠償

政府指針は、契約書や取引約款に、①暴力団を始めとする反社会的勢力が取引の相手方となることを拒絶する旨、②取引開始後に相手方が反社会的勢力であると判明した場合や不当要求を行った場合に契約を解除して排除できる旨を盛り込んでおくことが有効だとしています。これを実務の条項に落とすと、次の4つの部品になります。

部品役割書き漏らすとどうなるか
①表明・保証契約時点で反社会的勢力に該当しないことを相手に表明・保証させる後で判明しても「隠していた」と主張しにくい
②将来にわたる不作為の確約契約期間中、暴力的要求や威圧的言動などを行わないことを確約させる属性を立証できない相手に対処できない
③無催告解除該当が判明した場合、催告なく直ちに解除できると定める催告や相当期間の設定が必要になり、関係遮断が遅れる
④損害賠償の免責と請求解除により相手に生じた損害を賠償しない旨と、自社の損害を請求できる旨を定める解除したこと自体で損害賠償を請求されるリスクが残る

とくに③は重要です。契約解除は原則として催告を経る必要がありますが、無催告解除を明記しておけば、判明した時点で速やかに関係を断つ根拠になります。指針の解説にある「不実の告知に着目した契約解除」も同じ発想で、あらかじめ「自分が反社会的勢力でない」ことの申告を求める条項を置いておけば、その申告が虚偽だったと判明した場合に、暴力団排除条項および虚偽の申告を理由として契約を解除できるとされています。

条項の例

以下は、一般的な取引契約に置く反社条項のイメージです。そのまま使えるひな形ではなく、自社の取引実態に合わせて弁護士に確認したうえで整えてください。

第○条(反社会的勢力の排除)

  1. 甲および乙は、相手方に対し、自己、自己の役員および経営に実質的に関与する者が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」という)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを保証する。
  2. 甲および乙は、自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的言動または暴力を用いる行為、風説の流布・偽計・威力を用いて相手方の信用を毀損し、または業務を妨害する行為を行わないことを確約する。
  3. 甲または乙は、相手方が前2項に違反したと認めたときは、何らの催告を要することなく、直ちに本契約の全部または一部を解除することができる。
  4. 前項により本契約が解除された場合、解除した当事者は相手方に生じた損害を賠償する責任を負わない。解除により解除した当事者に損害が生じたときは、相手方はその損害を賠償する。
  5. 乙は、本契約に関する業務の全部または一部を第三者に再委託する場合、当該第三者に本条と同等の義務を負わせ、当該第三者が本条に違反した場合には、甲の求めに応じて当該再委託契約を解除するなど必要な措置を講じる。

第5項が、実務でよく抜け落ちる再委託先まで届かせる規定です。外注の外注が反社会的勢力でも、自社と直接の契約関係がないため手が出せない、という事態を防ぎます。業務委託契約書で再委託を認める場合は必ずセットで検討してください。

どの契約書に入れるか

契約の種類反社条項を入れる優先度補足
取引基本契約書個別契約に共通して効くため最優先。継続取引の入口
業務委託契約書再委託先への義務承継とセットで
秘密保持契約(NDA)取引前に最初に結ぶ書面。ここで入れておくと入口で拾える
利用規約不特定多数が相手になるサービスでは、退会・利用停止の根拠になる
雇用契約書・就業規則従業員側の関係遮断は就業規則の服務規律で定めるのが一般的
単発の発注書・注文請書基本契約がない相手には、注文書の裏面約款などで手当てする

契約書全体の構造や確認手順は契約書の基礎とチェックポイントにまとめています。電子契約で締結する場合も、条項の中身に違いはありません。

反社チェックの実務|いつ・何を・どこまで調べるか

取引前に行う反社チェックの流れ

条項を入れただけでは片手落ちです。前掲の令和5年度アンケート(全国暴力追放運動推進センター・日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会・警察庁が実施、回答2,329社)では、指針に沿った取組を行う企業のうち契約書等に暴力団排除条項を盛り込んでいるのは86.6%だったのに対し、**取引相手等が反社会的勢力かどうかの審査を実施しているのは39.8%**にとどまりました。条項と確認の両輪がそろって初めて機能します。

いつやるか

タイミングやること中小企業での目安
新規取引の開始前商号・代表者名での検索と基本情報の確認必須。契約書を交わす前に
一定金額を超える取引上記に加えて信用調査会社の利用を検討社内で金額基準を決めておく
契約更新・年次見直し前回チェック以降の新たな報道等を確認年1回、更新月にまとめて
相手方に変化があったとき代表者交代、株主変更、事業内容の大幅な変更時変更の連絡を受けたら都度
不審な兆候が出たとき支払条件の急な変更要求、威圧的な言動など気づいた時点で速やかに

何を調べるか

対象は法人名だけではありません。商号(旧商号・屋号を含む)、本店所在地、代表者名、主要な役員名、実質的に経営へ関与している人物まで広げます。個人事業主が相手なら氏名と屋号の両方です。登記情報で設立時期や役員の変遷、本店移転の履歴を確認すると、実態の薄い会社は不自然さが出やすくなります。

調べ方と、それぞれの限界

同じアンケートで、情報の入手方法として最も多かったのは「情報を入手したことはない」の41.7%でした。以下、無料のインターネット検索22.8%、業界団体等からの情報提供19.7%、警察からの情報提供16.7%、民間の調査会社14.3%と続きます。中小企業が現実にできる範囲を、コスト順に整理します。

手段費用感分かること限界
無料のインターネット検索無料過去の報道、行政処分、評判の断片情報の真偽が不明。同姓同名の誤認リスク
新聞記事データベース有料(月額)全国紙・地方紙の過去記事を横断検索報道されていない事実は拾えない
登記情報・決算情報の確認数百円〜設立時期、役員、本店移転履歴、資本構成属性そのものは分からない
信用調査会社・反社チェックサービス案件・月額課金独自データベースとの照合、企業実態の調査費用がかかる。網羅性は保証されない
業界団体・取引先からの情報無料〜業界内で共有されている注意情報加盟していなければ得られない
暴追センター・所轄警察署への相談無料具体的事案についての助言、必要な範囲での情報誰でも自由に照会できる制度ではない

どれも単独では十分でなく、組み合わせても「完全」にはなりません。 同アンケートで被害防止対策に困難を感じる企業が挙げた内容の第1位も「十分な反社会的勢力の情報を得ることが難しい」(80.9%)でした。この難しさは中小企業に限りません。だからこそ、契約書の反社条項でリスクを引き受けない設計にしておくことが重要になります。

警察・暴追センターへの相談という選択肢

都道府県暴力追放運動推進センター(暴追センター)は全都道府県に設置され、不当要求に関する相談や講習を担っています(全国暴力追放運動推進センター)。警察からの情報提供については、前掲の平成31年3月20日通達に基準があります。事業者が暴力団排除条例上の義務を履行するために必要と認められる場合には、その履行に必要な範囲で情報が提供されるとされ、次の点が前提になります。

  • 対象者の住所・氏名・生年月日等が分かる身分確認資料の提出
  • 取引関係を裏付ける資料の提出
  • 提供された情報を他の目的に利用しない旨の誓約書の提出
  • 回答は原則として口頭(相手方に守秘義務があるなど適正管理の仕組みがある場合は文書可)
  • 提供内容も、まずは「条例に規定された規制対象者等の属性に該当する旨」で足りるかを検討する

つまり、「気になる会社があるから調べてほしい」という漠然とした照会には応じてもらえないと考えるべきです。具体的な取引を前提に、資料をそろえて相談します。なお同通達では、暴追センターに相談があった場合も同じ基準で必要な情報がセンターに提供され、センターから相談者に告知されるとされています。まず暴追センターに相談するルートも有効です。

記録の残し方

反社チェックは「やったこと」を証明できて初めて意味を持ちます。1件につき1枚のチェックシートを作り、次を残しておきましょう。

  • 確認日、確認した担当者名
  • 確認対象(商号・代表者名・役員名など、実際に検索した文字列)
  • 使用した手段(検索エンジン、記事データベース、調査会社など)
  • 結果(該当なし/要確認事項あり/継続監視)と、そう判断した理由
  • 受領した表明・確約書の写し、契約書の反社条項の該当箇所

反社チェックで取得した情報には個人情報が含まれます。保管と共有のルールは、個人情報保護法への対応や社内の情報セキュリティ対策とあわせて設計してください。

疑わしいと分かったときの進め方

反社との関係が判明した場合の対応手順

指針の解説は、反社会的勢力であると完全に判明した段階だけでなく、疑いを生じた段階でも関係遮断を図ることが大切だとし、疑いの濃淡に応じて次の3つの対処方針を示しています。

  1. 直ちに契約等を解消する
  2. 契約等の解消に向けた措置を講じる
  3. 関心を持って継続的に相手を監視する(将来の解消に備える)

いきなり①しかない、という話ではありません。証拠が薄い段階で断定的な通知を出せば、名誉毀損や損害賠償を主張されるおそれもあります。実務は次の順で進めます。

手順やること注意点
①情報の集約誰が何を見聞きしたかを時系列で記録。契約書・メール・録音を保全担当者の記憶だけに頼らない
②社内での共有経営トップと担当役員に報告し、個人の判断で動かせない状態にする「大ごとにしたくない」が最も危険
③外部への相談顧問弁護士、所轄警察署の暴力団対策担当、暴追センターへ相談の記録も残す
④方針の決定解除・不更新・監視継続のどれを取るかを組織として決める決定した理由を文書化する
⑤通知・解除反社条項に基づき、内容証明郵便など記録の残る方法で通知通知の文面は弁護士に確認
⑥事後の対応未回収債権、引き渡し済みの物品、進行中の案件を整理単独での面談・回収交渉は避ける

やってはいけないこと

  • 担当者や担当部署だけで対応する。指針の第一原則が「組織としての対応」なのは、担当者個人が板挟みになって判断を誤ることを防ぐためです
  • 裏取引や資金提供。自社や従業員の不祥事をネタにされた場合でも、隠すための取引は絶対に行わない。これは指針の基本原則に明記されています
  • 不当要求に応じる。前掲アンケートでは、不当要求を受けた企業の57.5%が「一切応じなかった」と回答しました。応じた企業が挙げた理由の最多は「取引相手や関係者等に迷惑がかかると思ったから」です。周囲への配慮が、かえって被害を長期化させます

なお、要求を拒否した場合の相手方の反応は「特に問題行動を起こさず、あきらめた」が最多でした。関係遮断を検討した企業122社における遮断後の反応も、「反応なし」82.8%、苦情10.7%、訴訟1.6%、不当要求0.8%です。毅然と断ることのリスクは、多くの人が想像するほど高くないというのが公表データから読み取れる傾向です。ただし個別事案では危険が伴うため、社員の安全確保を最優先に、対応方法は必ず事前に警察・弁護士と相談してください。従業員を矢面に立たせない仕組みという点ではハラスメント対策と、代金回収が絡む場合は売掛金の未回収対応とも通じる話です。

金融機関・取引先から反社チェックを求められる場面

自社が「調べる側」ではなく「調べられる側」になる場面も整理しておきます。

場面求められること準備しておくもの
法人口座の開設反社会的勢力でない旨の表明・確約、取引時確認登記事項証明書、代表者の本人確認書類、事業実態が分かる資料
金融機関からの融資暴力団排除条項への同意、属性の確認決算書、事業計画書、役員名簿
大企業との新規取引反社会的勢力に該当しない旨の表明・確約書の提出自社の役員名簿、反社条項入りの自社ひな形
公共工事・自治体の入札暴力団排除に関する誓約書の提出各発注機関の様式に従う
許認可の取得・更新欠格要件に該当しないこと(例:建設業法第8条は暴力団員等を欠格要件としています)役員全員分の確認
上場準備(IPO)反社会的勢力との関係がないことを示す確認書等の提出役員・大株主・主要取引先の一覧と確認記録(提出書類フォーマット)

銀行界では2018年1月から、預金保険機構を介して警察庁の暴力団情報データベースに照会する仕組みが動いています(対象は新規の個人向け融資等。全国銀行協会の公表資料)。役員名簿や株主構成をいつでも出せる状態にしておくことが、これらの場面をスムーズに通過する鍵です。

中小企業の身の丈でつくるコンプライアンス体制

中小企業が反社排除で備えるべき体制

前掲アンケートで、指針に沿った取組を行っている企業(882社)の取組内容は次のとおりでした。

取組内容実施率
契約書・取引約款等に暴力団排除条項を盛り込んでいる(または予定)86.6%
反社会的勢力との関係遮断について社の内規に明文規程を設けている42.5%
基本方針を示し、社内外に宣言した41.0%
取引相手等が反社会的勢力かどうかの審査を実施している39.8%
組織全体として対応する仕組みを導入した35.3%
外部専門機関の連絡先・担当者を確認し、緊密な連携に努めている29.9%
不当要求防止責任者を選任して公安委員会に届け出ている24.8%

従業員数10人の会社が全部を一度に整える必要はありません。次の順で1つずつ進めるのが現実的です。

  1. 契約書ひな形に反社条項を入れる(今日できる)。既存のひな形をすべて見直し、抜けている契約書を洗い出す
  2. 相談先リストを作る(今日できる)。顧問弁護士、所轄警察署の暴力団対策担当、都道府県の暴追センターの連絡先を1枚にまとめ、経営者と現場責任者が持つ
  3. 新規取引の確認手順を決める(1週間)。誰が・いつ・何を調べ・どこに記録するかを1ページで定め、チェックシートの様式も作る
  4. 基本方針を1枚で明文化する(1か月)。「当社は反社会的勢力と一切の関係を持ちません。不当要求には応じません」という宣言と対応責任者を書き、就業規則の服務規律にも同趣旨を入れる
  5. 不当要求防止責任者を選任し、講習を受ける(随時)。暴力団対策法に基づく制度で、事業所ごとに責任者を選任して所轄警察署に届け出ると、公安委員会から講習の案内が届きます。教材・講習は無料です(警視庁の案内は東京都の例。他道府県は各都道府県警察・暴追センターへ)

株主構成や役員が変わる事業承継・組織再編のタイミングは、これらを見直す好機です。

まとめ

反社排除とコンプライアンスの基本対策まとめ

反社会的勢力の排除は、企業規模を問わず求められる基本的なコンプライアンスです。押さえるべき要点をもう一度整理します。

  • 契約書の反社条項は4点セットで書く。表明・保証、将来にわたる不作為の確約、無催告解除、損害賠償の免責と請求。再委託先への義務承継も忘れない
  • 反社チェックは完全ではないと認めたうえで、標準手順を決めて回す。無料の検索から始めてよい。大切なのは、確認した内容と判断理由を日付つきで記録に残すこと
  • 疑わしいと分かったら、単独で判断も交渉もしない。事実と証拠を集めて社内で共有し、弁護士・所轄警察署・暴追センターに相談してから通知する
  • 不当要求には応じない、裏取引はしない。公表データを見る限り、毅然と断った企業の多くで相手は特段の行動を起こしていません
  • 体制は身の丈で。条項・確認手順・相談先の3点から始める。政府指針の解説自体が、中小企業は規模に応じた対応でよいと述べています

条例の内容は都道府県ごとに異なり、条項の有効性や解除の可否は個別の事情で結論が変わります。判断に迷う場面では、弁護士や所轄警察署・暴力追放運動推進センターに早めに相談してください。警察・暴追センターへの相談は無料で、早いほど選択肢が多く残ります。

契約書のひな形整備や、発注・外注まわりのチェック手順づくりを実務が回る形に整えたい場合は、発注する側の実感をふまえて一緒に組み立てられます(法的判断は専門家と連携します)。お気軽にご相談ください

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よくある質問

反社条項(暴力団排除条項)は契約書に入れるべきですか?

入れることを強くおすすめします。多くの都道府県の暴力団排除条例には、事業者が書面で契約するときに暴力団排除の特約を定めるよう努める旨の規定があります(例:東京都暴力団排除条例第18条)。政府の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」でも、社内標準の契約書や取引約款に暴力団排除条項を盛り込むことが望ましいとされています。全国暴力追放運動推進センターなどが実施した令和5年度の調査でも、指針に沿った取組を行う企業の86.6%が契約書・取引約款に暴力団排除条項を盛り込んでいる(または盛り込む予定)と回答しています。

反社チェックはどこまでやれば十分ですか?

「これをやれば完全」という水準は存在しません。前掲の令和5年度調査では、被害防止対策で困難を感じる点として「十分な反社会的勢力の情報を得ることが難しい」が80.9%で最多でした。中小企業の現実的な進め方は、新規取引・大口取引・契約更新のタイミングを決めて、商号と代表者名でのインターネット検索と新聞記事検索、登記や決算書などの基本情報の確認までを標準手順にし、判断に迷う案件だけ信用調査会社や警察・暴力追放運動推進センターに相談することです。チェックの結果は日付と担当者名を添えて記録に残します。

反社チェックで警察に問い合わせれば教えてもらえますか?

誰でも自由に照会できる仕組みではありません。警察庁の通達「暴力団排除等のための部外への情報提供について」(平成31年3月20日)では、暴力団排除条例上の義務履行を支援する場合などに、必要な範囲で情報提供を行うとされています。照会にあたっては対象者の氏名・住所・生年月日などが分かる身分確認資料や取引関係を裏付ける資料、目的外に利用しない旨の誓約書の提出を求められ、回答は原則として口頭とされています。まずは都道府県の暴力追放運動推進センターや所轄警察署の暴力団対策担当に相談するのが実務的です。

取引開始後に相手が反社会的勢力だと分かったらどうすればよいですか?

反社条項を根拠に契約を解除する方向で進めますが、単独で動かないことが原則です。政府指針の解説では、疑いが生じた段階でも関係遮断を図ることが大切だとされ、対応として直ちに解消する・解消に向けた措置を講じる・継続的に監視するといった段階が示されています。実務では、事実関係と証拠を整理したうえで弁護士に相談し、警察や暴力追放運動推進センターとも連絡を取りながら、通知の方法と時期を決めます。要求には応じず、和解金や口止め料のような裏取引は絶対に行いません。

反社条項を使って契約を解除すると報復されませんか?

前掲の令和5年度調査では、関係遮断を検討したことがある122社のうち、遮断後の相手方の反応は「反応なし」が82.8%で、苦情が10.7%、訴訟が1.6%、不当要求が0.8%でした。不当要求を拒否した企業の反応でも「特に問題行動を起こさず、あきらめた」が最多です。もちろん個別事案では危険が伴うため、社員の安全確保を最優先にし、通知の方法や面談の可否を含めて事前に警察・弁護士と相談してください。

小さな会社でもコンプライアンス体制は必要ですか?

必要ですが、大企業と同じ体制を作る必要はありません。政府指針の解説にも、中小企業・零細企業では内容を忠実に実施することが困難なため、企業規模に応じて5つの基本原則を中心とした適切な対応をすることが大切だと記されています。最低限、契約書の反社条項を標準化する、新規取引時の確認手順を決める、相談先(顧問弁護士・所轄警察署・暴力追放運動推進センター)の連絡先を一覧にして共有する、この3つから始めるのが現実的です。