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副業・兼業の解禁|企業側のメリット・ルール・労働時間の通算

副業・兼業の解禁|企業側のメリット・ルール・労働時間の通算

人材確保が難しい今、副業・兼業を認めるかどうかは中小企業の人材戦略の分かれ目になっています。解禁を検討するなら、まず次の3点を整えることから始めます。

  • 就業規則:届出制(または許可制)と、禁止・制限できる範囲を明文化する
  • 労働時間の通算:副業先でも雇用される場合は、本業と通算して管理する考え方を持つ
  • 健康管理:長時間労働を見逃さない申告と把握の仕組みをつくる

副業の解禁は「認める・認めない」を一度決めて終わりではなく、ルールと運用をセットで設計することが要です。会社側の視点で、背景・メリット・リスク・就業規則・労働時間の通算・健康と社保税・進め方までを実務目線で整理します。

※労働法・社会保険・税の取り扱いは専門的で、個別事情によって結論が変わります。実際の制度設計は社会保険労務士・税理士にご確認ください。本記事は一般的な考え方の整理です。

副業解禁が進む背景

副業解禁が進む背景

副業・兼業をめぐる流れは、ここ数年で大きく変わりました。

国は働き方改革の一環として副業・兼業を推進しており、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、わかりやすい解説も繰り返し更新しています。あわせて、企業が就業規則のひな形として参照する厚生労働省のモデル就業規則も、原則として副業・兼業を認める方向に改定されました。かつての「許可なく他で働いてはならない」という発想から、「ルールを整えたうえで認める」方向へと考え方の軸が移っています。

背景には、働く側の意識の変化があります。収入を補いたい、本業では得られない経験を積みたい、独立に向けて準備したい、といった理由で副業を望む人が増えています。中小企業にとっては、こうした希望に応えられるかどうかが、採用・定着の差につながりはじめています。

ただし「国が推進しているから無条件に解禁してよい」という意味ではありません。ガイドラインは、労働時間の通算や健康管理など、会社が果たすべき責任もあわせて示しています。推進と管理はセットだと理解しておくことが、後のトラブルを防ぎます。

企業側のメリットとリスク

副業解禁の企業側のメリットとリスク

副業の解禁は、会社にとってプラスとマイナスの両面があります。先に両方を把握してから、自社で認めるかどうかを判断します。

メリット

  • 人材の確保・定着:多様な働き方を認める会社は、採用市場で選ばれやすくなります。副業を理由にした離職を防ぐ効果も期待できます。
  • スキル・知見の獲得:社外での経験が本業に還元され、新しい視点や技術が社内に持ち込まれます。
  • オープンな組織づくり:隠れて副業をする状態がなくなり、会社が状況を把握したうえで支援できます。社員の自律性を尊重する姿勢は、エンゲージメントの向上にもつながります。

リスク

  • 本業への支障:疲労や集中力の低下で、本来の業務の質が落ちる懸念があります。
  • 長時間労働:本業と副業を合わせると労働時間が過大になり、健康を損なうおそれがあります。
  • 情報漏えい・競業:自社の機密情報の流出や、競合他社での活動による利益相反の問題が生じることがあります。
  • 労務管理の負担:後述する労働時間の通算など、管理側の手間が増えます。

リスクは「だから禁止する」ための理由ではなく、「だからルールで対処する」ための論点です。次の就業規則の整備で、これらにどう備えるかを具体化していきます。

就業規則でルールを整える

副業を認める際に就業規則で整えるルール

副業を認めるにしても禁止するにしても、出発点は**就業規則で方針を明文化する**ことです。曖昧なまま黙認する状態が、最もトラブルになりやすいからです。

届出制か許可制か

  • 届出制:社員が副業を始める前に会社へ届け出る方式。原則認めつつ、会社が内容を把握できます。促進の方向に沿った運用がしやすい形です。
  • 許可制:会社の許可を得てから副業を行う方式。管理は強まりますが、合理的な理由なく許可しないと、解禁の趣旨と矛盾しかねません。

どちらにする場合も、申請の様式・提出のタイミング・労働時間の申告方法をあわせて定めておきます。

禁止・制限できる場合

国が推進する方向とはいえ、無条件に何でも認めるわけではありません。モデル就業規則でも、次のような場合は副業を禁止・制限できるとされています。

  • 競業:自社と競合する事業で、会社の利益を害するおそれがある場合
  • 情報漏えい:業務上の秘密が漏れるおそれがある場合
  • 信用の毀損:会社の名誉や信用を損なう、または信頼関係を破壊する行為がある場合
  • 健康・本業への支障:労務提供に支障が生じる(過度な長時間労働など)場合

これらは「禁止できる範囲」を具体的に書いておくほど、運用時の判断がぶれません。あわせて、入社時の雇用契約書や誓約書で、秘密保持の義務を確認しておくと安心です。

労働時間の通算と管理モデル

副業先の労働時間の通算と管理モデル

会社側がつまずきやすいのが、この労働時間の通算です。ここはガイドラインの考え方を正確に押さえておきます。

通算が必要なケース・不要なケース

労働時間の通算が必要になるのは、副業先でも雇用契約を結ぶ(労働者として働く)場合です。本業と副業先の労働時間を合算し、法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を基準に管理します。

一方で、フリーランス・業務委託・請負・自営など、労働者として働かない形態は、労働時間の通算の対象外です。労働基準法の労働時間規制が適用されないためです。自社の社員がどちらの形で副業をするのかで、管理の要否が変わる点を押さえておきます。

通算の順序は、まず雇用契約の先後にしたがって所定労働時間を通算し、次に実際に所定外労働が行われた順に所定外労働時間を通算する、という二段階で考えます。法定労働時間を超えて働かせた使用者が、その超えた部分について時間外労働の割増賃金を支払う義務を負います。割増賃金の扱いはとくに誤りやすいため、労働時間と残業代の基本もあわせて確認してください。

管理モデルという簡便な方法

本業と副業先がお互いの実労働時間を逐一やり取りするのは負担が大きいため、ガイドラインは「管理モデル」という簡便な方法を示しています。

仕組みを大まかに言うと、副業を始める前に、本業(先契約)と副業先(後契約)がそれぞれ労働時間の上限を、時間外労働の上限規制の範囲内であらかじめ設定します。各社がその上限の範囲内で働かせ、自社で発生した所定外労働などについて割増賃金を支払う形にすると、他社の実労働時間を都度把握しなくても法令を守れるという考え方です。

中小企業にとっては、相手先と上限を取り決めておくこのモデルが現実的な選択肢になります。ただし、自社が先か後か、上限をどう設定するかで負担が変わるため、導入時は社労士と一緒に設計するのが確実です。

健康管理と社会保険・税

副業解禁時の健康管理と社会保険・税の確認事項

健康管理(過重労働の防止)

労働時間を通算した結果として長時間労働になれば、健康へのリスクが高まります。会社は社員に対して安全配慮義務を負っており、健康診断や長時間労働者への面接指導、ストレスチェックといった健康確保措置の対象になります。

実務では、副業先を含めた労働時間を社員から申告してもらい、過重になっていないかを会社が把握できるようにしておくことが基本です。届出様式に労働時間の見込みや実績を記入する欄を設けておくと、把握がしやすくなります。健康を起点に職場全体を整える視点は、健康経営の取り組みとも重なります。

社会保険・税

  • 社会保険:加入関係は、それぞれの勤務先での労働時間や賃金などの条件によって決まります。複数の事業所で加入要件を満たすケースもあり、その場合は手続きが必要になります。詳しくは社会保険の加入の考え方も参考にしてください。
  • 税(確定申告):副業の所得が一定額を超えると、社員本人が確定申告を行う必要が出てきます。会社側で税額計算まで担う性質のものではありませんが、「申告が必要になる場合がある」ことは社員へ案内しておくと親切です。

社会保険・税はいずれも個別性が高く、制度も改正されます。最新の取り扱いは社会保険労務士・税理士に確認してください。

進め方と失敗例

副業解禁の進め方とありがちな失敗例

4ステップで進める

  1. 方針を決める:認める・認めない、届出制か許可制かを経営として決定します。
  2. ルールを定める:就業規則に、禁止・制限できる範囲、申請手続き、労働時間の申告を盛り込みます。
  3. 届出様式を用意する:副業先・業務内容・労働時間の見込み・秘密保持の確認などを記入できる申請書を整えます。
  4. 運用して見直す:届出を受けて把握し、長時間労働や競業の懸念がないかを定期的に確認します。状況に応じてルールを更新します。

副業の解禁は、在宅勤務や時短など柔軟な勤務制度と組み合わせると、より働きやすい仕組みになります。

ありがちな失敗例

  • ルールなしで黙認:就業規則に何も定めず、なんとなく見て見ぬふりをしている状態。情報漏えいや競業が起きても対応の根拠がなく、後手に回ります。
  • 届出を受けても把握しない:申請は受けるものの、労働時間を確認しないまま放置し、過重労働に気づけない状態。健康管理の責任を果たせません。
  • 基準が曖昧で不公平:許可・不許可の基準が人によって違い、社員の不信を招くケース。基準を就業規則に明記しておくことで防げます。

こうした失敗は、いずれも「最初にルールと運用の仕組みを決めていない」ことが原因です。制度として整えておけば、認める場合も禁止する場合も筋の通った対応ができます。副業の取り扱いを人事評価制度と切り離して考え、評価の不利益につなげないよう配慮する点もあわせて整理しておきます。

まとめ

副業解禁で整えるべき就業規則と労働時間管理

副業・兼業の解禁は、就業規則・労働時間の通算・健康管理の3点を整えることが出発点です。国は推進の方向にあり、人材の確保・定着やスキル向上というメリットが見込める一方で、長時間労働・情報漏えい・競業といったリスクには会社としての備えが要ります。

一律禁止でも野放しの黙認でもなく、届出のルールと禁止・制限できる範囲を明文化し、労働時間の通算は管理モデルなども踏まえて設計し、健康と社保税の取り扱いは専門家と確認する。この順で進めれば、副業の解禁は人材戦略の前向きな一手になります。

「副業解禁を含む就業規則・人事制度の整備を相談したい」場合は、社労士とも連携しながら一緒に整えられます。お気軽にご相談ください

よくある質問

副業解禁に関するよくある質問

本文中で触れた論点のうち、相談の多いものをまとめました。

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よくある質問

会社は副業を認めるべきですか?

国は副業・兼業を推進しており、厚生労働省のモデル就業規則も原則として認める方向に改定されています。人材の確保・定着やスキル向上といったメリットがある一方、労働時間の管理や情報漏えいなどのリスクもあります。一律禁止ではなく、就業規則でルールを整えたうえで認める企業が増えています。最終的な制度設計は社会保険労務士にご確認ください。

副業を認める場合、就業規則で何を決めますか?

届出制または許可制のどちらにするか、禁止・制限できる範囲(競業・情報漏えい・健康への支障・会社の信用を損なう場合など)、申請の方法、労働時間の申告のしかたを定めます。トラブルを防ぐため、あらかじめルールを明確にして全社員に周知することが重要です。

副業先の労働時間は通算が必要ですか?

副業先でも雇用契約を結ぶ(労働者として働く)場合は、本業と副業の労働時間を通算して管理する必要があります。一方、フリーランス・業務委託・自営など労働者として働かない形態は、労働時間の通算の対象外です。通算が必要な場合は割増賃金の扱いに注意し、簡便な「管理モデル」の活用も検討できます。

副業で社会保険や確定申告はどうなりますか?

社会保険は、それぞれの勤務先での労働時間や賃金などの条件によって加入関係が変わり、複数の事業所で加入要件を満たすケースもあります。所得税は、副業の所得が一定額を超えると本人が確定申告を行う必要が出てきます。いずれも個別性が高いため、社会保険労務士や税理士への確認が確実です。

ルールを決めずに副業を黙認しても問題ありませんか?

黙認は、長時間労働の見落とし・割増賃金の未払い・情報漏えい・競業といったリスクをそのまま抱える状態です。会社が労働時間や副業先を把握できず、健康管理の責任を果たしにくくなります。認めるか禁止するかにかかわらず、まず就業規則で方針と届出のルールを定めることをおすすめします。