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役員報酬の決め方|定期同額給与・社会保険・節税のバランスをわかりやすく解説

役員報酬の決め方|定期同額給与・社会保険・節税のバランスをわかりやすく解説

会社を設立して最初の決算までに必ず決めるのが 役員報酬(社長などの役員に支払う給与) です。月10万円にするか、50万円にするか、80万円にするか。金額一つで、法人税・所得税・社会保険料の合計が年間数十万円単位で変わります。しかも役員報酬には「期の途中で自由に変えられない」という独特のルールがあり、決め方を間違えると「払ったのに経費にならない」事態も起こります。

役員報酬の決め方は、(1)税務上のルールを守ること、(2)会社と個人の税負担のトータルで最も軽くなる水準を探すこと、この2点に集約されます。本稿では、損金算入の3類型・社会保険料との関係・具体的な数値例を整理します。

※税務・社会保険の取り扱いは個別事情や制度改正で変わります。本記事は一般的な解説です。税務・法務の最終判断は税理士など専門家に確認し、具体的な金額設定は必ず専門家に相談して決めてください。

役員報酬が損金になる3つの類型

役員報酬が損金になる3類型の比較

役員報酬は、従業員の給与と違い、原則として決まった形で支給しないと経費(損金)として認められません。法人税法上、損金算入が認められる役員給与は次の3類型に限られます(国税庁タックスアンサーNo.5211「役員に対する給与」)。中小企業で実際に使うのは、ほぼ(1)と(2)です。

類型概要中小企業での使われ方
①定期同額給与支給時期が1か月以下の一定期間ごとで、各支給時期の支給額が同額の給与最も一般的。毎月の役員報酬はこれ
②事前確定届出給与所定の時期に確定額を支給する旨を事前に税務署へ届け出た給与役員賞与(ボーナス)を損金にしたいとき
③業績連動給与利益などの指標に基づいて算定される給与同族会社は原則対象外。中小では使わない

③の業績連動給与は、原則として同族会社以外の法人(上場企業など)が対象で、オーナー一人の同族会社では基本的に使えません。中小企業のオーナー社長は、毎月の報酬を①定期同額給与で、賞与を出すなら②事前確定届出給与で、と理解しておけば十分です。

①定期同額給与と「改定3か月ルール」

定期同額給与と改定3か月ルールのタイムライン

毎月の役員報酬の柱が定期同額給与です。ポイントは、金額を変えられるタイミングが決まっていること。国税庁No.5211によれば、定期同額給与として認められる改定は次の場合です。

  • 通常改定:事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までの改定
  • 臨時改定事由:役員の職制上の地位の変更など、やむを得ない事情による改定
  • 業績悪化改定事由:業績の著しい悪化などによる減額改定

つまり、3月決算の会社なら、新年度(4月)開始から6月末までに改定するのが通常パターンです。このタイミングを逃すと、原則として翌期まで金額を変えられません。

なぜこんなルールがあるのかというと、利益操作を防ぐためです。もし期の途中で自由に増減できると、決算の着地を見て「利益が出そうだから役員報酬を上げて法人税を減らす」といった調整ができてしまいます。それを防ぐため、期の途中の安易な増減は、その差額が損金として認められないことがあります。「払ったのに経費にならない」とは、この状態を指します。

②事前確定届出給与(役員賞与を損金にする)

事前確定届出給与の届出から支給までの流れ

役員にボーナスを出して損金にしたい場合は、事前確定届出給与の届出が必要です。届出期限は、原則として次のいずれか早い日までです(国税庁No.5211)。

  • 株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日
  • 会計期間開始の日から4か月を経過する日

届け出た「支給日・支給額」どおりに支給しないと、原則として損金算入が認められません(1円でも、1日でもずれると全額否認されうる点に注意)。社会保険料の観点で「毎月の報酬を抑えて賞与に寄せる」設計に使われることもありますが、要件が厳格なので税理士と組んで進めるのが安全です。

会社と個人、どちらで持つか(税負担のバランス)

会社と個人の税負担をトータルで比較する図解

役員報酬の設定は、「会社の利益」と「個人の手取り」のどちらに寄せるかの調整です。

役員報酬を上げると役員報酬を下げると
会社の利益↓(法人税↓)会社に利益が残る(法人税↑)
個人の所得税・住民税↑個人の税負担↓
社会保険料↑(将来の年金は手厚く)社会保険料↓

役員報酬を上げれば会社の法人税は減りますが、その分を個人が所得税・住民税・社会保険料として負担します。会社+個人のトータルの負担が軽くなる水準を探すのがポイントで、節税の観点でも重要なテーマです。判断材料となる利益見込みは決算書の読み方も参考にしてください。

個人側にかかる税金の目安(速算表)

役員報酬は税務上「給与所得」です。まず収入から給与所得控除を引き、各種控除を引いた「課税所得」に所得税率をかけます。

給与所得控除(令和7年分以降、国税庁No.1410

給与収入給与所得控除額
190万円まで65万円
190万円超〜360万円収入×30%+8万円
360万円超〜660万円収入×20%+44万円
660万円超〜850万円収入×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

所得税の速算表(国税庁No.2260

課税所得税率控除額
1,000円〜194.9万円5%0円
195万円〜329.9万円10%9.75万円
330万円〜694.9万円20%42.75万円
695万円〜899.9万円23%63.6万円
900万円〜1,799.9万円33%153.6万円
1,800万円〜3,999.9万円40%279.6万円
4,000万円以上45%479.6万円

このほかに住民税(おおむね所得の10%)と、復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります。所得税は所得が上がるほど税率が高くなる累進課税なので、報酬を上げ過ぎると個人側の税率が一気に重くなる点に注意します。

※制度・金額・税率は2026年6月時点の情報です。改正により変わるため、最新は国税庁等の公表情報でご確認ください。

社会保険料との関係(上げ過ぎ注意)

役員報酬と社会保険料の関係

常勤役員は会社で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入し、保険料は役員報酬の額(標準報酬月額)で決まります。保険料は会社と個人で折半します。

  • 厚生年金保険料率:18.3%(労使折半で本人負担は約9.15%。平成29年9月以降この率で固定)
  • 健康保険料率:協会けんぽの場合、都道府県により異なりおおむね10%前後(労使折半)

つまり会社負担と個人負担を合わせると、報酬のおおむね30%弱が社会保険料として出ていく計算です。役員報酬を上げると、所得税・住民税だけでなくこの社会保険料も両建てで増えます。報酬を上げ過ぎると、節税できた法人税以上に社会保険料の負担が重くなることもあるため、「トータルで損をしていないか」を必ず確認しましょう。一方で、厚生年金は将来の年金額に反映されるため、保険料が完全な「コスト」とは限りません。最新の料率は日本年金機構でご確認ください。

具体的な数値例で考える

役員報酬の水準別に会社利益と個人負担を比較する図解

たとえば「会社の税引前利益(役員報酬を引く前)が1,000万円」のケースで、報酬水準を変えると個人側の課税所得がどう動くかをイメージします(各種所得控除や扶養は考慮しない概算)。

役員報酬(年)給与所得控除後おおまかな所得税率帯
360万円約266万円10%帯
600万円約436万円20%帯
840万円約650万円20%帯

報酬を会社に残せば法人税(中小法人の所得800万円以下の部分は軽減税率15%、超過部分は原則23.2%が目安)がかかり、個人に寄せれば所得税・住民税・社会保険料がかかります。法人税率と、個人側の「所得税+住民税+社会保険料」の合計負担率を見比べ、合計が小さくなる水準を探すのが基本の考え方です。実際には扶養・各種控除・退職金設計まで絡むため、シミュレーションは税理士と行うのが確実です。給与計算の実務は給与計算の基礎も参考になります。

決め方の手順

役員報酬の決め方の手順

  1. 生活に必要な額を確保する(個人のキャッシュフロー)
  2. 会社の利益見込みを踏まえる(事業計画決算の見通し
  3. 法人税率と個人の合計負担率を見比べ、トータルで軽くなる水準を探す
  4. 期首から3か月以内に改定する(タイミングを逃さない)

注意点と失敗例

役員報酬の注意点と失敗例のチェックリスト

  • 改定タイミングを逃した:期首から3か月を過ぎてから増額し、増額分が損金にならなかった
  • 賞与の届出忘れ・支給ズレ:事前確定届出給与で届出額と1円・1日でも違い、賞与全額が損金否認された
  • 役員報酬の未払い計上:資金繰りが苦しく未払いにしたが、定期同額給与の要件を満たさず否認された例もある
  • 不相当に高額:職務内容に比べ不相当に高額な部分は損金否認される(国税庁No.5211)
  • 社会保険料の見落とし:法人税は減ったが、社会保険料の増加で手取りベースでは損をしていた

まとめ

役員報酬を会社と個人の両方で設計するまとめ

役員報酬は、①定期同額給与・②事前確定届出給与という損金算入の型を守ることが大前提です。そのうえで、会社の法人税率と、個人の所得税・住民税・社会保険料の合計負担率を見比べ、トータルで最も軽くなる水準を探します。改定できるのは原則「期首から3か月以内」だけなので、一度決めたら1年は変えられないつもりで、利益見込みと生活費を踏まえて慎重に決めましょう。税務・法務の最終判断は税理士など専門家に確認し、具体的な金額はシミュレーションして決めるのが確実です。

「役員報酬を含めた会社のお金の設計を相談したい」場合は、事業計画や資金繰りと合わせて整理できます(税務の最終判断は専門家と連携します)。お気軽にご相談ください

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よくある質問

役員報酬は自由に変えられないのですか?

原則として毎月同額(定期同額給与)にする必要があり、金額の変更は事業年度開始の日から3か月を経過する日までの改定が基本です。期の途中で自由に増減させると、その差額分が損金(経費)として認められない場合があります。これは役員報酬による利益操作を防ぐためのルールです。詳細は税理士に確認しましょう。

役員にボーナス(賞与)を出して経費にできますか?

できますが、原則として事前に税務署へ『事前確定届出給与』の届出が必要です。届出期限は、株主総会等の決議日から1か月を経過する日と、会計期間開始日から4か月を経過する日のいずれか早い日が目安です。届け出た支給日・支給額どおりに支給しないと損金算入が認められないため、要件が厳格です。税理士と進めるのが安全です。

役員報酬は高い方が得ですか、低い方が得ですか?

一概には言えません。役員報酬を上げると会社の利益(法人税)は下がりますが、個人の所得税・住民税・社会保険料は上がります。逆に下げると会社に利益が残り法人税がかかります。『会社+個人のトータルの負担』が最も軽くなるバランスを探すのがポイントで、利益見込みや生活費を踏まえて決めます。税理士とシミュレーションするのが確実です。

社長の社会保険はどうなりますか?

常勤の役員(社長など)は、原則として会社で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入します。保険料は役員報酬の額(標準報酬月額)に応じて決まり、会社と個人で折半して負担します。報酬を上げると社会保険料も増えるため、税金だけでなくこの負担も合わせて考える必要があります。最新の料率は日本年金機構等でご確認ください。