KURYU お役立ちブログ
契約・法務

商標登録の基本と費用|中小企業が自社ブランドを守る手順

商標登録の基本と費用|中小企業が自社ブランドを守る手順

新しいサービス名を決めて名刺もWebサイトも作った直後に、「その名前、うちが商標を持っています」という通知が届く。あるいは逆に、数年かけて育てた屋号を他社に先に登録され、看板を下ろすことになる。どちらも中小企業で実際に起きているトラブルです。

玖柳は制作会社やフリーランスへ実際に発注する側として、ロゴ・サイト・印刷物の制作を日常的に依頼しています。その立場から「発注した制作物の権利をどう自社に集めるか」「名前を守るのに何をいくら払うのか」を、特許庁・国税庁・e-Gov法令検索の一次情報にあたって整理します。

先に要点を3つ

  1. 費用は区分数で決まる。特許庁に納めるのは出願時に3,400円+(区分数×8,600円)、登録時(10年分)に区分数×32,900円。1区分なら合計44,900円で10年もちます。
  2. 日本は先願主義。先に使っていても、先に出願した他社が権利を取ります。使い始める前後が出願の検討タイミングです。
  3. 外注したロゴは、払っただけでは自社のものにならない。著作権の譲渡は契約書に特掲が必要で、商標の出願は自社名義で別途行います。

※本記事は2026年7月時点で公開されている法令・公表情報をもとにした一般的な整理です。ある商標が登録できるか、他社の権利を侵害しないかは個別の判断になり、審査官や裁判所の判断と一致するとは限りません。出願や権利関係の具体的な判断は弁理士・弁護士など専門家にご確認ください。金額は制度改正で変わるため、必ず特許庁の最新の料金一覧をご確認ください。

知的財産権の全体像|6つの権利を1枚の表で

知的財産の主な種類を比較する図解

「知財」とひとくくりにされますが、守る対象・権利の発生のしかた・存続期間はそれぞれ違います。特許庁は知的財産権を、創作意欲の促進を目的とした「知的創造物についての権利」と、使用者の信用維持を目的とした「営業上の標識についての権利」に大別しています(特許庁「知的財産権について」)。

権利主な保護対象権利の発生存続期間
特許権発明(技術的なアイデア)出願+出願審査請求+審査を経て登録出願日から20年(特許法第67条第1項
実用新案権物品の形状・構造・組合せに係る考案出願して登録(実体審査を経ない)出願日から10年(実用新案法第15条
意匠権物品等のデザイン(形状・模様・色彩)出願+審査を経て登録出願日から25年(意匠法第21条第1項
商標権商品・サービスの目印(名称・ロゴ等)出願+審査を経て登録設定登録の日から10年。更新すれば半永久(商標法第19条
著作権文章・写真・イラスト等の表現創作した時点で自動発生(登録不要)原則、著作者の死後70年(著作権法第51条第2項)。法人名義の著作物は公表後70年(同第53条第1項)
営業秘密ノウハウ・顧客名簿等の秘密情報登録不要。3要件を満たす管理状態要件を満たしている限り(不正競争防止法第2条第6項

このうち特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つが産業財産権と呼ばれ、いずれも特許庁への出願と登録が必要です。裏を返せば、出願しなければ絶対に手に入らない権利ということでもあります。

中小企業がまず向き合うのは商標と著作権

製造業以外の中小企業が日常的に関わるのは、圧倒的に商標権著作権です。特許や意匠は「発明した」「独自のデザインを作った」場面に限られますが、社名・サービス名・ロゴは、どんな業種でも必ず持っています。

なお、実用新案は実体的な審査を経ずに登録される仕組みで、権利を行使するには実用新案技術評価書を提示して警告することが求められます(実用新案法第29条の2)。「登録された=有効性が確認された」ではない点は、特許や商標と大きく異なります。

商標権とは|「マーク × 商品・サービス」で1つの権利

商標権と著作権の違い

特許庁は商標を「事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)」と説明しています(特許庁「商標制度の概要」)。文字・図形・記号・立体的形状のほか、動き・ホログラム・色彩のみ・音・位置といったタイプも登録の対象です。

ここで最も誤解が多いのが、商標権は「マーク単体」に与えられるものではないという点です。特許庁は「商標権は、マークと、そのマークを使用する商品・サービスの組合せで一つの権利」としています。出願時には、商標そのものに加えて、それを使う商品(指定商品)またはサービス(指定役務)を指定して書きます。この指定商品・指定役務が権利の範囲そのものになります。

区分は第1類〜第45類。ただし「区分=類似関係」ではない

指定商品・指定役務を書くときは、あわせて区分を記載します。区分は商品・役務を一定の基準でカテゴリー分けしたもので、第1類から第45類まであります。一般に第1類〜第34類が商品、第35類〜第45類がサービス(役務)に対応します。

よくある事業検討することが多い区分内容のイメージ
飲食店・カフェ第43類飲食物の提供
小売店・ECショップ第35類小売等役務、広告、事業の管理
ソフトウェア・SaaS第9類・第42類プログラム/プログラムの提供
教室・スクール第41類教育、研修、セミナーの企画運営
美容室・サロン第44類美容、理容
建設・リフォーム第37類建設工事、修理

上の表はあくまで出発点です。実際の指定は特許庁の「類似商品・役務審査基準」やJ-PlatPatの商品・役務名リストで確認してください。

そして重要な注意点があります。特許庁は「商品・役務の『区分』は類似関係を定めたものではありません」と明記しています。審査で類似かどうかを推定するために使われるのは、区分ではなく類似群コードです。たとえば第16類の「文房具類」には25B01というコードが付与され、鉛筆・ボールペン・消しゴム・筆箱はいずれも互いに類似すると推定されます。一方、同じ第16類でも「印刷物」は26A01で、文房具類とは非類似と推定されます。同じ区分に入っていれば安心、でもなければ危険、でもないということです。

登録できない商標

出願すれば必ず通るわけではありません。特許庁は、登録できない商標として次の3類型を挙げています。

類型具体例根拠
自他商品・役務を区別できないもの産地・販売地・品質のみを普通に表示するもの、普通名称、ありふれた氏や名称、極めて簡単でありふれた標章商標法第3条第1項
公益に反するもの国旗と同一・類似、公序良俗を害するおそれ、商品の品質の誤認を生じるおそれ(例:ビールに「○○ウィスキー」)商標法第4条第1項
他人の商標と紛らわしいもの他人の登録商標と同一・類似で、使用する商品・役務も同一・類似商標法第4条第1項

類似かどうかは、商標の**外観(見た目)・称呼(呼び方)・観念(意味合い)**を総合的に判断します。特許庁は、デジタルカメラについて登録済みの商標がある場合、それと1文字違いの商標をビデオカメラについて出願しても登録できない、という例を挙げています。見た目が違っても読みが似ていれば拒絶されうるという点は、ネーミングの段階から意識しておきたいところです。

なお、識別力がないとされた商標でも、使用をされた結果として需要者が誰の業務に係る商品・役務か認識できるようになったものは登録を受けられる例外があります(商標法第3条第2項)。ただしこの例外の対象は、産地・品質等の表示(第3条第1項第3号)、ありふれた氏または名称(同第4号)、極めて簡単でありふれた標章(同第5号)に限られます。普通名称や慣用商標(同第1号・第2号)は、どれだけ使い込んでもこの規定では救済されません。また、先に出願した人の承諾があり、混同のおそれがないと認められる場合には後から出願した人も登録を受けられる仕組み(いわゆるコンセント制度)が商標法第8条第1項ただし書に定められています。

商標登録の費用|特許庁に納める金額の計算方法

商標登録のメリットと先願主義

商標の費用は「一律いくら」ではなく、区分の数で決まります。以下は特許庁「産業財産権関係料金一覧」(2026年4月6日更新)の金額です。

手続特許庁に納める金額
商標登録出願3,400円+(区分数×8,600円)
設定登録料(10年分)区分数×32,900円
設定登録料(5年ごとの分割納付・前期/後期それぞれ)区分数×17,200円
更新登録申請(10年分)区分数×43,600円
更新登録料(分割納付・前期/後期それぞれ)区分数×22,800円
書面で手続した場合の電子化手数料2,400円+(書面のページ数×800円)

出典:特許庁「産業財産権関係料金一覧」(2026年7月時点で確認)

区分数別の合計額(出願+10年分の登録料)

区分数出願料登録料(10年分)合計
1区分12,000円32,900円44,900円
2区分20,600円65,800円86,400円
3区分29,200円98,700円127,900円

1区分なら44,900円で10年間の権利です。年あたり約4,500円と考えると、社名やサービス名を守るコストとしては現実的な水準でしょう。逆に「念のため」と区分を増やすと費用は比例して膨らみます。

ここで注意したいのが、使う予定のない区分を押さえても意味がないという点です。継続して3年以上、日本国内で登録商標を使っていない場合、誰でも不使用取消審判を請求でき、取り消されうると定められています(商標法第50条)。区分は「広く押さえる」ではなく「実際に使う事業をカバーする」で選びます。

資金繰りが厳しいときは5年分割という選択肢

登録料は10年分を一括で納める方法のほか、5年ずつの分割納付が選べます。1区分なら10年一括32,900円に対し、分割は前期17,200円+後期17,200円=34,400円で、総額はやや高くなります。初期費用を抑えたいときの選択肢と理解しておくとよいでしょう。

弁理士費用と印紙税は別に見積もる

上の金額はあくまで特許庁に納める分です。弁理士に調査・出願・中間対応を依頼する場合は、別途代理人報酬がかかります。金額は事務所と案件によって幅があるため、複数から見積もりを取ってください。

もう一つ見落とされがちなのが印紙税です。国税庁は、印紙税法上の「無体財産権」に特許権・実用新案権・商標権・意匠権・回路配置利用権・育成者権・商号および著作権が含まれるとしており、これらの譲渡に関する契約書は第1号文書として課税されます(国税庁「印紙税額の一覧表(その1)」)。契約金額の記載がないものは200円、1万円以上10万円以下は200円といった具合に金額で変わります。ただし、文書全体の記載内容によって所属が決まるため、判定に迷う場合は所轄の税務署にご確認ください。金額の目安は印紙税額の自動計算ツールで確認でき、判定の考え方は契約書の印紙税はいくらかで整理しています。

出願から登録までの流れとJ-PlatPatでの事前調査

商標登録の出願から更新までの流れ

  1. 商標と使用範囲を決める:どの文字・ロゴを、どの商品・サービスに使うかを言語化する
  2. 先行商標を調査する:J-PlatPatで同一・類似の登録商標がないか確認する
  3. 区分と指定商品・指定役務を決める:実際に使う事業をカバーする範囲に絞る
  4. 特許庁へ出願する:電子出願が基本。書面提出の場合は電子化手数料が別途かかる
  5. 審査を受ける:拒絶理由通知が来た場合は意見書・手続補正書で対応する
  6. 登録料を納付する:登録査定または審決の謄本の送達があった日から30日以内に納付(商標法第41条第1項
  7. 設定登録:商標登録原簿に登録され、ここで商標権が発生する

登録後は、存続期間の満了前6か月から満了の日までの間に更新登録の申請をします(商標法第20条第2項)。この期間に申請できなかったときは経済産業省令で定める期間内に追納できますが、それも過ぎると存続期間の満了時にさかのぼって消滅したものとみなされます(同条第4項)。更新の管理は、担当者の頭ではなくカレンダーやタスク管理ツールに落としておいてください。

J-PlatPatでの先行商標調査のやり方

J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館が提供する無料の検索システムです。出願前の一次スクリーニングはここで行えます。

  • **「商標」→「商標検索」**を開き、検討中の名称を入力する
  • 称呼(読み方)でも検索する:審査は外観・称呼・観念を総合判断するため、カタカナ読みが同じ商標も拾う
  • 区分で絞り込む:自社が使う予定の区分に絞ってヒット件数を見る
  • ヒットした商標の中身を確認する:指定商品・指定役務、権利者、存続期間満了日をチェックする

ただし、調査で見つからなかった=必ず登録できる、ではありません。まだ公開されていない先願がある可能性や、類否の判断が審査官と食い違う可能性があります。ネーミングの段階で候補を3つほど出し、それぞれ調査してから絞り込むのが現実的な進め方です。

早めに権利化したいときの早期審査

特許庁は商標にも早期審査の制度を設けており、要件や必要書類は「商標早期審査・早期審理ガイドライン」で公表されています(特許庁「早期審査について」)。なお、2026年4月6日更新時点の産業財産権関係料金一覧には、商標の早期審査に関する手数料の記載はありません。要件を満たすかどうかの判断は個別性が高いため、利用を検討する場合はガイドラインを確認するか弁理士にご相談ください。

商標を取らないと何が起きるか

商標と知財の注意点

「ずっと使っているから大丈夫」は、日本の商標制度では通用しません。特許庁は、同一・類似の商標について出願があった場合、その商標を先に使用していたか否かにかかわらず、先に出願した者に登録を認める先願主義を採用していると説明しています(商標法第8条第1項)。

先に使っていた側を守る仕組みとして先使用権商標法第32条)はあります。しかし条文の要件は、他人の出願前から不正競争の目的でなく使用していた結果、**出願の際に「需要者の間に広く認識されている」**ことです。地域で少し知られている程度で認められるとは限らず、立証も容易ではありません。先使用権を当てにした運用は危ういと考えたほうが安全です。

商標を取らないまま使い続けた場合に起こりうることを整理します。

起こりうること内容
他社に先に登録される同じ名称が使えなくなり、看板・パッケージ・Webサイト・名刺の作り直しが発生する
差止め・損害賠償を受ける特許庁は、権利を侵害する者に対して侵害行為の差止めや損害賠償等を請求できるとしている
検索・広告での競合が起きる同名の他社が出てくると、指名検索の受け皿を奪われる
事業承継やM&Aで評価されないブランドが法的に裏づけられていないと、資産として説明しにくい

ドメイン・SNSアカウント名との関係

「ドメインを取ったから名前は自分のもの」という理解は誤りです。ドメインの登録、SNSアカウント名の確保、商標登録はそれぞれ別の仕組みで、どれか1つを押さえても他が自動的について来ることはありません。名前を決める段階では、商標の調査・ドメインの空き・主要SNSのアカウント名を同時に確認するのが実務的です。ドメイン取得の実務は独自ドメインの取り方・選び方にまとめています。

もう一点、特許庁は商標権は日本全国に効力が及ぶ権利であり、外国には及ばないとしています。海外展開を考えているなら、その国での権利取得を別途検討する必要があります。

他社の権利を侵害しないために|外注制作物の権利処理

外注した制作物の著作権と商標登録の考え方

守る話と同じくらい重要なのが、知らずに他社の権利を侵害しないことです。制作物の素材ごとに、関係する権利と確認事項を整理します。

素材主に関係する権利発注・制作時に確認すること
ロゴ・社名商標権・著作権先行商標の調査。著作権の譲渡または利用範囲の明記
キャッチコピー商標権(短い言葉は著作物として保護されにくいとされる)他社の登録商標と同一・類似でないか
写真著作権、被写体の肖像権・パブリシティ権素材サイトの利用規約、モデルの同意の有無
イラスト著作権譲渡か利用許諾か。改変・二次利用の可否
フォントライセンス契約ロゴへの使用、埋め込み、商標登録の可否が制限されることがある
音源・BGM著作権・著作隣接権商用利用・動画での利用が許諾範囲に入っているか

外注で作ったロゴの権利は誰のものか

ここが発注側の最大の落とし穴です。発注して代金を払っただけでは、著作権は自社に移りません。従業員が職務上作成し法人名義で公表する著作物は法人が著作者になり得ますが(著作権法第15条第1項)、ただし同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるかは、雇用契約の有無だけでなく、実質的な指揮監督関係や報酬の性質などから判断されるとされています。独立した事業者へ発注する通常の外注では、原則としてこの規定は当てはまりません。外注した制作物の著作権は、原則として制作した側にあります。

譲渡を受ける場合、必ず押さえるべき条文が2つあります。

  • 著作権法第61条第2項:著作権を譲渡する契約において、第27条(翻案権等)または第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定される。つまり「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約では、ロゴの色替え・縦組み展開・改変を自社で自由にできないおそれがあります。契約書には「第27条および第28条の権利を含む著作権のすべてを譲渡する」と明記します。
  • 著作権法第59条:著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡できません。そのため実務では「著作者人格権を行使しない」旨の合意を契約に入れます。

そのうえで、商標登録の出願は自社(発注者)名義で行います。ロゴの著作権を誰が持つかと、商標権者を誰にするかは別の話です。制作会社の名義で出願してもらう必要はありません。条項の書き方は業務委託契約書の作り方著作権の基礎、依頼の進め方はロゴ制作の外注ガイドチラシ・印刷物のデザイン外注ガイドにまとめています。契約書全体の構成は契約書の基本と作り方、継続取引の枠組みは取引基本契約書とはが参考になります。

生成AIで作ったロゴ・画像を使うとき

画像生成AIで作った素材は、著作物性の有無や既存の作品との関係について、まだ論点が固まりきっていない領域です。少なくとも、生成物が他社の登録商標や既存の著作物と類似していないかは人の目で確認する必要があります。また、利用しているサービスの規約で商用利用の範囲が定められていることも多く、規約の確認は必須です。断定できる段階ではないため、ブランドの中核になるロゴを生成AIだけで決めるのは慎重に判断してください。ツールごとの商用利用条件は画像生成AI比較で整理しています。広告表現そのものの規制は広告表現の規制まとめが別途参考になります。

登録しないで守る「営業秘密」という選択肢

ブランドを守るための商標登録と知財のまとめ

顧客名簿、独自の製造方法、見積の原価テーブル、仕入先リスト。これらは出願になじまない一方で、流出すれば事業に直撃します。こうした情報は**不正競争防止法上の「営業秘密」**として保護され得ます。

同法第2条第6項は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しています。経済産業省は、これを3つの要件として整理しています(経済産業省「営業秘密~企業の知的財産分野~」)。

要件意味実務での対応例
秘密管理性秘密として管理されていることアクセス権限の限定、「社外秘」表示、保管場所の区分、持出しルールの明文化
有用性事業活動に有用な技術上・営業上の情報であること顧客名簿、原価表、製造条件、失敗した実験データも含まれ得る
非公知性公然と知られていないこと公開資料・Webサイト・カタログに載せていない状態を保つ

3要件のうち、実務で最も争いになりやすいのが秘密管理性です。経済産業省は「営業秘密管理指針」で、法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示しています。「大事な情報だと社内では思っていた」だけでは足りず、従業員が秘密だと認識できる状態を客観的に作っておく必要があります。

外部に情報を渡すときは、必ず渡す前に秘密保持契約を締結してください(秘密保持契約(NDA)の作り方)。加えて、生成AIに社内情報を入力する運用が広がっているため、入力ルールの整備も現代的な論点です(生成AIの情報漏洩対策)。

相談先とコストの考え方

  • 弁理士:調査・出願・区分の選定・拒絶理由通知への対応。重要なブランドは相談する価値があります
  • INPIT 知財総合支援窓口:全国47都道府県に設置され、全国共通のナビダイヤル(0570-082100)から最寄りの窓口につながります(INPIT知財総合支援窓口)。出願前の相談、営業秘密管理、海外展開の相談などに対応しています
  • 支援制度:知財関連の補助制度や料金の減免制度が用意されていることがありますが、対象・要件・金額は年度によって変わります。特許庁や各自治体の最新の公募要領を確認してください(補助金・助成金ガイド

著作権制度そのものについては文化庁の著作権ページが一次情報になります。

まとめ

ブランドを守る作業は、次の順番で進めると迷いません。

  1. 名前を決める前にJ-PlatPatで調べる:候補を複数出し、称呼でも検索する
  2. 使う事業をカバーする区分だけ選ぶ:1区分44,900円が10年分。使わない区分は取消のリスクもあり無駄になる
  3. 使い始める前後に出願する:日本は先願主義。先使用権は当てにしない
  4. 外注制作物は契約で権利を集める:著作権法第61条第2項の特掲と、著作者人格権不行使の合意
  5. 商標の出願は自社名義で:著作権の帰属と商標権者は別の話
  6. 登録しない情報は営業秘密として管理する:秘密管理性・有用性・非公知性の3要件
  7. 更新期限を管理する:満了前6か月から満了日まで。逃すとさかのぼって消滅する

商標は、取得コストに対して守れるものが大きい制度です。一方で、区分の選定や類否の判断は専門性が高く、独力での判断が事業リスクに直結する領域でもあります。調査と方針決めは自社で、最終判断は弁理士とという役割分担が、中小企業にとって現実的です。

玖柳は発注する側として、ロゴ・Webサイト・印刷物・SNS運用などの制作を日常的に依頼しています。「外注した制作物の権利が自社に集まっているか整理したい」「発注書や業務委託契約書の権利条項を見直したい」といった実務面のご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ(権利の専門的な判断は弁理士・弁護士と連携して進めます)。制作の依頼そのものについてはホームページ制作の依頼ガイドSNS運用代行の依頼ガイドもご覧ください。

関連記事

よくある質問

商標登録の費用はいくらかかりますか?

特許庁に納める金額は、出願時が3,400円+(区分数×8,600円)、登録時(10年分)が区分数×32,900円です(2026年4月6日更新の産業財産権関係料金一覧)。1区分なら出願12,000円+登録32,900円で合計44,900円、2区分なら合計86,400円になります。10年分をまとめず5年ごとに分割納付する場合は、前期・後期それぞれ区分数×17,200円です。これとは別に、弁理士へ依頼する場合は代理人費用がかかります。

商標登録はした方がいいですか?

長く使う予定の社名・商品名・サービス名・ロゴであれば、検討する価値があります。日本は先に出願した人に登録を認める先願主義(商標法第8条)のため、先に使っていたという事実だけでは守れません。先使用権(第32条)はありますが、その商標が需要者の間に広く認識されていることが条件で、ハードルは高いのが実情です。他社に先に登録されると、使い続けること自体が侵害になりかねません。

著作権と商標権はどう違いますか?

著作権は創作した時点で自動的に発生する権利で、文章・写真・イラストなどの表現を保護します(登録不要)。商標権は特許庁に出願して登録を受けて初めて発生する権利で、商品・サービスを区別するための目印(名称やロゴ)を保護します。ロゴは表現としての著作権と、目印としての商標の両面を持つため、外注で作った場合は著作権の譲渡と商標の出願を両方セットで考える必要があります。

商標登録は自分でできますか?

特許庁への出願自体は本人でも可能です。ただし、どの区分でどの指定商品・指定役務を書くか、先行商標と類似しないか、拒絶理由通知が来たときにどう反論するかは専門的な判断になります。区分の選び方を誤ると、登録できても実際に使っている事業をカバーできないという事態も起こります。重要なブランドは弁理士に相談するか、INPITの知財総合支援窓口(全国47都道府県)の無料相談を使うのが安全です。

外注して作ってもらったロゴの権利は誰のものですか?

発注して代金を払っただけでは著作権は自社に移らず、制作した側に残るのが原則です。譲渡を受けるときは、著作権法第61条第2項により、第27条(翻案権等)と第28条の権利を譲渡対象として契約書に特掲しないと譲渡者に留保されたと推定されます。ロゴの色替えや改変ができなくなるおそれがあるため、契約書には特掲を入れてください。加えて、著作者人格権は譲渡できない(第59条)ので、行使しない旨の合意を入れるのが実務です。商標登録の出願は制作会社ではなく自社名義で行います。