ECサイト制作を外注する依頼ガイド|作り方・費用・依頼先の選び方
ネットショップを始めたい、いまのECを作り直したい。そう思って見積りを取り始めると、ASPカート・モール出店・パッケージ・フルスクラッチと作り方が何通りもあり、どれを基準に判断すればいいのか分からなくなります。EC制作の外注は、Webサイト制作以上に「決済・在庫・物流・集客」という運用の要素が絡むため、作って終わりにできないのが難しいところです。
外注する立場でまず押さえたいのは、次の3点です。
- 作り方を先に絞る。費用も依頼先も、ASPかフルスクラッチかでまるごと変わります。決めずに見積りを取っても比較になりません。
- 「作る」より「運用」を先に設計する。集客・受注・在庫を誰がどう回すかを決めないと、売れないECができ上がります。
- 特商法の表記など法対応を自社で準備する。記載内容は事業者の義務で、制作先に丸投げできません。
この3点を起点に、作り方の選択肢から依頼先選び・契約・失敗例までを発注する側の視点で整理します。カートの料金そのものは「ネットショップ作成サービス比較」、モールと自社ECの選択は「ECモール出店と自社ECの違い・選び方」で詳しく扱っています。
※費用は作り方・規模・依頼先で大きく変わります。本記事では具体的な金額の相場は断定しません。最新の料金は各サービスや依頼先の見積りでご確認ください。
ECサイトの作り方と、外注が必要になるケース

ECサイトの作り方は大きく4つに分かれ、それぞれ向き不向きと外注の必要範囲が違います。
| 作り方 | 概要 | 外注が必要になりやすい場面 |
|---|---|---|
| ASP型カート(BASE・STORES・Shopify等) | 月額制のサービスに登録して使う。手軽で早く始められる | デザインの作り込み、初期設定、外部連携、テーマのカスタマイズ |
| モール出店(Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング等) | 集客力のあるモールに出店。手数料がかかる | 商品ページ作成、画像・バナー制作、運用代行 |
| パッケージ(ECパッケージ・EC-CUBE等) | 既製のEC構築ソフトを土台に構築する。中〜大規模向け | 設計・構築・カスタマイズ・サーバー設定の大半 |
| フルスクラッチ | ゼロから独自開発する。完全独自・特殊要件向け | 要件定義から開発・テストまでほぼ全工程 |
中小企業・店舗が初めて自社ECを持つなら、現実的なのはASP型カートにデザインと初期設定だけを外注する形です。月額の固定費を抑えつつ見栄えと使い勝手を整えられます。一方、独自の購入フローや基幹システムとの連携、大量の商品・アクセスをさばく必要があるなら、パッケージやフルスクラッチが視野に入り、外注の範囲も一気に広がります。
モールと自社ECは二択ではなく、両方に出すケースも多くあります。集客はモールに乗せ、ブランドづくりとデータ蓄積は自社ECで、という使い分けです。判断軸は「ECモール出店と自社ECの違い・選び方」で整理しています。
自分で作れる範囲と、外注すべき範囲
ASPカートは、商品登録や基本的な公開なら専門知識がなくても自分で進められます。外注を検討すべきなのは、おおむね次のような場合です。
- 競合と差がつくデザインや、ブランドの世界観を作り込みたい
- 決済・配送・在庫・会計など外部システムとの連携が必要
- 既存サイトや別カートからの商品・顧客データ移行がある
- 自社に手を動かす人がいない、または公開時期が決まっていて急ぐ
逆に、まず小さく試したいだけなら、自分で立ち上げて反応を見る選択もあります。自作・ノーコード・外注の比べ方は「ホームページの作り方」の考え方がそのまま参考になります。
外注で頼める範囲

「EC制作を外注する」と一言で言っても頼める工程は幅広く、どこを任せるかで費用も体制も変わります。
- 要件定義:何を・誰に・どう売るかを言語化し、必要な機能や連携を決める。曖昧なまま進むと後で必ず手戻りが出ます。
- デザイン:トップ・商品一覧・商品詳細・カート・購入完了などの画面設計と見た目。スマホ表示の作り込みは特に重要です。
- 構築・設定:カートの初期設定、テーマのカスタマイズ、決済・送料・税の設定など。
- 決済・物流・在庫の連携:決済代行サービスや配送会社、在庫・受発注システムとのつなぎ込み。
- データ移行:既存サイトからの商品・顧客・注文データの移し替え。件数が多いと専門的な作業になります。
- 運用保守:公開後の不具合対応、カートやプラグインの更新、軽微な修正、相談窓口。
全部まとめて依頼することも、デザインだけ・移行だけと部分的に頼むこともできます。商品登録や日々の受注処理は自社で持つケースが多いので、「制作は外注・運用は自社」か「制作も運用も外注」かを最初に決めると、見積りの前提がそろいます。運用まで任せたいなら「EC運用代行の依頼・選び方ガイド」も参考になります。
依頼前に決めておくこと

見積りやデザインの前に、自社側で固めておきたいのが次の5点です。ここが決まっていれば、依頼先とのやり取りがスムーズになり、追加費用も読めます。
- 商材:何を売るか。食品・アパレル・予約・定期購入など、商材によって必要な機能(賞味期限管理、サイズ展開、予約枠、サブスク決済など)が変わります。
- 規模:商品点数・想定アクセス・注文件数。小さく始めるか、最初から本格運用かで作り方が変わります。
- 予算:初期費用と運用月額を分けて考えます(次章で詳述)。上限を持っておくと作り方も選びやすくなります。
- 公開時期:いつ売り始めたいか。繁忙期や催事に合わせるなら、撮影・原稿・移行の段取りも逆算します。
- 運用体制:公開後に誰が受注・在庫・問い合わせ・集客を担当するか。ここが空白だと、作っても回りません。
特に商品写真と商品説明文は売上に直結するため、外注先に任せきりにせず早めに準備を始めるのがおすすめです。
要件を頭の中だけで持っていると依頼先ごとに伝わり方がぶれます。発注前に書き出して共有しておきましょう(要件整理には記事末で紹介する「発注書・要件定義ジェネレーター」が便利です)。
制作費の考え方(相場は作り方で大きく変わる)

EC制作の費用は作り方によって桁が変わるため、「ECサイトはいくら」と一律には言えません。ASPカートにデザインと設定だけを頼む場合と、フルスクラッチで作り込む場合では、初期費用も運用月額もまったく別物です。金額は商材・商品点数・連携システム・移行の有無で動くので、同じ条件をそろえて複数社から見積りを取って比較するのが確実です。
費用は初期と運用を分けて見るのがコツです。
- 初期費用:要件定義・デザイン・構築・初期設定・移行・撮影などの一時費用。作り方が大きい(パッケージ・フルスクラッチ)ほど膨らみます。
- 運用月額:カートの月額利用料・サーバー費・保守費・運用代行費などの継続費用。ここに決済手数料や販売手数料が乗ることも忘れないでください。
- その他:将来の機能追加・改修、広告費、撮影や原稿の追加など、立ち上げ後の費用も見込みます。
初期費用が安く見えても、運用月額や手数料が積み上がると年単位では逆転することがあります。初期と運用を合わせた数年スパンの総額で比べると判断を誤りにくくなります。カートの料金・手数料は「ネットショップ作成サービス比較」、Web制作全般の費用感は「Web制作を外注する費用相場」をどうぞ。自社EC(パッケージ・フルスクラッチ)はサーバー費も継続費用に入るため、「レンタルサーバーの選び方・比較」も確認しておくと安心です。
制作会社・依頼先の選び方

依頼先には、EC専門の制作会社、Web制作会社、フリーランス、クラウドソーシングなどがあります。Webサイトは作れてもEC特有の決済・在庫・物流の経験が浅い先もあるため、見た目だけでなく次の4点を確認してください。
- ECの実績:扱う商材に近いECの制作経験があるか。アパレル・食品・予約など、商材が違えば必要な機能も違います。コーポレートサイトの実績だけでは判断しきれません。
- 使うカート:得意なカートは依頼先ごとに違います。自社が使いたいカートの実績があるか、逆に「特定カートしかやらない」先でないかを確認します。
- 公開後の保守:納品して終わりか、不具合対応や更新まで見てくれるか。ECは公開後にトラブルが起きやすいので、保守の範囲と窓口を事前に確認します。
- 集客・運用まで見てくれるか:SEOや広告、運用改善まで相談できるか。売上を上げたいなら、制作と集客を切り離さずに考えられる先が心強いです。
部分依頼から試すのも有効です。デザインやバナーだけをクラウドソーシングに出し、相性や品質を確かめてから本格的に依頼する進め方もできます(→クラウドソーシング比較)。複数社に同じ条件で見積りを取り、金額だけでなく提案内容・保守・対応のしやすさで比べましょう。
契約と権利で確認すること

ECは商売の根幹を預ける制作なので、契約で権利関係をはっきりさせておくと後のトラブルを防げます。特に次の点を依頼前に確認してください。
- ソースコード・アカウントの帰属:パッケージやフルスクラッチなら、納品物のソースコードを自社が持てるか。ドメイン・サーバー・決済サービスや、ASPカートのアカウントは自社名義で取得・保有するのが原則です。制作先名義のままだと、解約や乗り換えのときに身動きが取れなくなります。
- 素材の権利:撮影した写真、作成したデザイン、ロゴなどの著作権・使用範囲。他社に乗り換えても使い続けられるか、二次利用に制限がないかを確認します。
- 保守の範囲:月額に含まれる作業はどこまでか。不具合対応・更新・修正・相談のうち、何が範囲内で何が追加費用かを契約書で明確にします。
- 検収・納期・支払い条件:何をもって完成(検収)とするか、テスト注文の確認を含むか、納期と支払いのタイミングはどうか。
口約束ではなく書面で残すのが基本です。契約書の押さえどころは「業務委託契約書の作り方とチェックポイント」で詳しく解説しています。
法対応で押さえること(特商法・インボイス・決済)

ECは消費者に直接販売するため、開業時から守るべきルールがあります。制作先に丸投げできない部分が多いので、事業者として最低限ここは押さえておきましょう。
- 特定商取引法の表記:ネット通販では、事業者名・住所・電話番号・販売価格・送料・支払い方法・返品の可否と条件などの記載が法律上必要です。カートには表記欄を設置する機能がありますが、書く中身は事業者自身が正確に用意する義務があります。何を書くべきかは「特定商取引法の表記とは」で確認できます。
- インボイス制度:適格請求書発行事業者なら、領収書や請求書の様式が制度に対応している必要があります。法人顧客が多い場合は特に影響します。詳しくは「インボイス制度の対応ガイド」をご覧ください。
- 決済:使える決済手段(クレジットカード・コンビニ払い・QRコード決済・後払いなど)は売上に直結します。手数料や入金サイクルも踏まえて選びます。店舗も持つ場合は「キャッシュレス決済の比較」が参考になります。
このほか景品表示法(誇大表示の禁止)や個人情報の取り扱いも関わります。法対応は後回しにすると公開直前に慌てがちなので、要件整理と並行して進めておくと安心です。
よくある失敗例と避け方

最後に、発注の現場でよく起きる失敗を3つ挙げます。いずれも「作ること」に意識が向きすぎて「運用」を軽視したときに起こります。
- 集客を考えずに作る:立派なECを作っても訪問者がいなければ売れません。公開後にSEO・SNS・広告・メルマガのどれで集客するかを、制作と同時に設計しておきます。検索集客の基本は「SEOの始め方」、SNSとの組み合わせは「SNS運用代行の依頼・選び方」が入口になります。
- 運用できない作りにする:自社で商品登録や受注処理ができない複雑な仕組みにすると、更新が止まり在庫もずれていきます。誰が運用するかを決め、その人が無理なく回せる作りにします。受注・在庫の仕組みは「受発注システム比較と選び方」も参考に。手が足りないなら「EC運用代行」に任せる選択もあります。
- 移行を軽視する:既存サイトからの商品・顧客・SEO評価の移行を甘く見ると、データ欠落やURL変更による検索順位の低下が起きます。移行がある場合は、件数・対象・リダイレクトの方針を最初に詰めます。
外注全般でつまずきやすい点は「外注で失敗する5つの理由」にもまとめています。
まとめ

ECサイト制作の外注は、作り方を先に絞り、外注する範囲と自社で持つ範囲を切り分け、公開後の運用まで含めて設計できるかで成否が分かれます。費用は作り方で桁が変わるため相場の断定は難しく、初期と運用を分けて同じ条件で見積りを比較するのが確実です。契約では権利とアカウント名義を、法対応では特商法の表記を最初に押さえておきましょう。
発注前の要件整理には「外注 発注書・要件定義ジェネレーター」が便利です。商材・規模・予算・公開時期・運用体制を一枚にまとめてから依頼すると、認識のズレも追加費用も減らせます。
EC立ち上げの方針づくりから集客・運用まで相談したい場合は、戦略設計から一緒に伴走できます。お気軽にご相談ください。
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よくある質問
ECサイト制作の費用はどのくらいかかりますか?
作り方で大きく変わるため、一律の相場では言えません。ASPカート(BASE・STORES・Shopify等)にデザインや初期設定だけを外注する場合と、独自に作り込むフルスクラッチでは、初期費用にも運用月額にも大きな差が出ます。さらに商品数・連携する外部システム・移行の有無でも変動します。まず作り方を絞り込み、同じ条件で複数社から見積りを取って確認してください。
ECサイト制作で外注できるのはどこまでですか?
要件定義、デザイン、カート構築・設定、決済や配送・在庫システムとの連携、既存サイトからの移行、公開後の運用保守まで外注できます。逆に商品登録や日々の受注処理は自社で回すケースも多いので、どこを任せてどこを自社で持つかを最初に切り分けると、費用と体制が整理しやすくなります。
ECサイトは作った後の集客が大事と聞きました。本当ですか?
はい。ECは公開してからが本番で、集客(SEO・SNS・広告・メルマガ)と運用(受注処理・在庫・問い合わせ対応)が売上を左右します。制作を依頼する段階で、公開後に誰がどう集客し運用するのかまで決めておかないと、作ったものの売れない状態になりがちです。
特定商取引法の表記は外注先が用意してくれますか?
表記欄の設置はカートの標準機能で用意できますが、記載する内容(事業者名・住所・連絡先・返品条件など)は事業者自身が正確に用意する義務があります。制作先に丸投げできる部分ではないため、依頼前に自社で記載事項を準備しておきましょう。
どの依頼先に頼むか、何を基準に選べばいいですか?
ECの制作実績、使うカートの得意・不得意、公開後の保守をしてくれるか、集客や運用まで見てくれるかの4点が軸になります。Webサイト全般は作れてもEC特有の決済・在庫・物流の経験が浅い先もあるため、扱う商材に近い実績を確認するのが安全です。